2016 Fiscal Year Annual Research Report
超高電流密度SOFC発電へ向けた電極間相互作用と最適セル構造の研究
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15H03930
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩井 裕 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00314229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 英生 京都大学, 工学研究科, 教授 (50166964)
齋藤 元浩 京都大学, 工学研究科, 助教 (90314236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱工学 / 燃料電池 / 電極微構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度には、研究の第1段階の目標として設定した電極間相互作用について検討した。これには初年度に開発した両電極微構造と電解質を考慮するSOFC過電圧解析プログラムを使用した。電解質はYSZ、電極はNi-YSZ燃料極およびLSM空気極あるいはLSM-YSZ空気極とした。多孔質体である両電極の3次元微構造データは、実験室で実際に発電試験に使用したボタン型小型セルの電極に対して、収束イオンビームを備えた電子顕微鏡(FIB-SEM)で観察することで得た。Niは純粋な電子伝導体、LSMとYSZは混合伝導体とした。YSZ電解質の厚さや、LSM空気極のスケールを仮想的に変更するなどして系の代表スケールを相対的に変更して解析をおこなった。得られた主な知見は次のとおりである。電極-電解質界面付近ではイオン電流が界面に存在する三相界面(TPB)に集中する結果、オーム損失が顕著に増大する。電極-電解質界面付近でのイオン電流の顕著な不均一は、電解質中央では緩和される。今回設定した条件では、電解質厚さが8umの場合には、電解質中央において局所電流密度の最大値と最小値の比は2程度であった。このときそれぞれの電極は互いの微構造の影響をほとんど受けていない。いっぽう電解質が薄い1umの場合には電解質中央でも電流密度の不均一性は強く、両電極は相互に影響し合っている。 なお空気極については、近年お中低温作動SOFCでしばしば採用されるLSCF空気極にも対応できるように、解析プログラムの開発をおこなった。LSCFは混合伝導体として扱い、電気化学反応はLSCFの表面反応のみを考慮した。 このほか、研究の第2段階で実施する最適計算手法のSOFC過電圧解析への適用の準備として、電極を均質な多孔質体とみなす既存の2次元解析プログラムを基盤として、プログラム開発の推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1段階で計画していた電極間相互作用についての検討を、今回開発した数値解析プログラムを用いることで実施することができた。本プログラム開発についてはさらに、当初予定していたLSM空気極に加えてLSCF空気極にも対応できるところまで進展した。いっぽうH28年度に着手した第2段階に関する最適化計算手法の適用については、合理的な計算結果の取得に至っておらず開発に時間を要している。第2段階については今後より加速して進展させることが必要になるが、第1段階については当初予定以上の開発が進み、全体としてはおおむね順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第2段階である最適化計算手法のSOFC過電圧解析への適用に注力し加速する。ただし第1段階の解析結果から、現在一般的に使用されている電解質厚さや運転条件では、両電極間の相互作用はそれほど強くないことが示唆された。将来的に極薄電解質を使用する場合には再検討が必要となるが、現在一般的な条件であれば電極構造については従来どおりに燃料極・空気極を別個に開発することは合理的といえる。よって本研究でめざす発電密度向上につながるセル構造としては、コンポジット電極内に含まれる電解質の構造とともに、両電極間の電解質の構造も重要であり、これを最適化の対象とすることも視野に入れる。
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Research Products
(6 results)