2015 Fiscal Year Annual Research Report
超小型動的機械システムの基本特性と振動制御手法の開発
Project/Area Number |
15H03935
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
森下 信 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (80166404)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 振動 / 固有振動数 / 減衰 / 超小型振動系 / ハイスピードカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,極細ピアノ線による微小なコイルばねを用いた超小型振動系を実験的に構築して,この振動系の動的特性と従来のニュートン力学に基づく予測値とを比較し,その差異の原因特定と定量的考察,さらには振動制御方法について提案することを目的としている.振動系を極めて小さくした際に,慣性力,空気抵抗力,静電気力,摩擦力,構造減衰等の影響について定量的な考察を行うことによってマイクロマシン実現への基礎的知見を獲得し,さらに超小型振動系に対する系統的な振動制御法について検討する. 平成27年度は、ばねと質量の2要素からなる超小型1自由度振動系を構成して,振動実験を実施した.この超小型振動系をどこまで小さくすると,どれだけ運動方程式の予測値と異なるか,定量的な考察を行った.理論値と実験値が異なる要因として,ばね材料内部の構造減衰,空気抵抗,静電気力等の影響,弾性力に対する慣性力の大きさの影響が現時点で考えられる.これらの要因の振動系に対する影響の大きさを実験的に同定するために,複数の大きさのばねを製作し,実験を行った.超小型振動系を構成するばねの製作は東京都大田区にある小松ばね工業(株)に依頼した.振動中の鋼球の変位測定には,変位計や加速度系を利用した通常の測定方法では困難であり,研究代表者が所有する顕微鏡と高速度カメラの機能を持ち合わせている「ハイスピードマイクロスコープ」を利用した.今後はさらに複数の実験を繰り返して再現性を確認すると同時に、減衰の付与方法について実験的検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、ばねと質量の2要素からなる超小型1自由度振動系を構成して,振動実験を実施した.超小型振動系を構成するばねの製作は東京都大田区にある小松ばね工業(株)に依頼した。.振動中の鋼球の変位測定には,変位計や加速度系を利用した通常の測定方法では困難であり,研究代表者が所有する顕微鏡と高速度カメラの機能を持ち合わせている「ハイスピードマイクロスコープ」を利用した.これらは、実験計画と概ね合致している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として次の2点を計画している。 (1)1自由度系振動系の減衰実装方法に関する検討:振動系における振動原因は多岐にわたるが,振動予防および一旦発生した振動を抑制するためには減衰を付与することが高い信頼性を与えると同時に効果的である.しかし,今回の申請課題のように超小型振動系に減衰を与えるための減衰器が試作された例は過去になく,減衰を与えることすら考えられていない.超小型振動系に減衰器を設置するとなれば,その減衰器は超小型振動系よりさらに小型化する必要があり,そのような減衰器を設計することは極めて困難である.申請代表者はこれまでに機能性材料を用いた減衰機構に関する研究を進めてきた.機能性材料としては電気粘性流体および磁気粘性流体であり,磁気粘性流体としての「磁気粘性グリース」等を可変減衰として利用できることを示してきた.これらを超小型振動系に適用することを試みる. 磁気粘性グリースはグリースとしての付着力を有し,さらに加えた磁場の強度により摩擦抵抗を増加させることができる.外部から磁場を加える電磁石等の装置は小型化することが難しいが、超小型振動系に対して外部から磁場を加えて磁気粘性グリースのレオロジー特性を変化させることで減衰を与える可能性について検討する. (2)多自由度振動系による振動実験:まず,コイルばねを直列に結合した2自由度振動系による実験を行う.これは1自由度系に付加した質量系が動吸振器としての効果を確認するためである.付加する質量系は主系よりさらに小さくする必要があると考えている。
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