2015 Fiscal Year Annual Research Report
クープマンモード解析に基づく電力ネットワークのデータ駆動型運用技術の構築
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15H03964
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薄 良彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40402961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 千昭 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00456162)
太田 豊 東京都市大学, 工学部, 准教授 (50372537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電力系統工学 / クープマン作用素 / クープマンモード / 安定性 / フェーザ計測装置 / 風力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電力ネットワークの状態監視、診断、及び制御に関するデータ駆動型技術のクープマンモード解析(Koopman Mode Analysis: KMA)に基づく構築を目的とする。本研究で対象とする電力システム技術は、観測又は予測(シミュレーション)データから上記3つの機能を実現するアルゴリズムに関わるものであり、平成27年度は以下5点の研究開発を実施した。 - KMAの新たなアルゴリズムとしてプローニ(Prony)解析を拡張したベクトル・プローニ解析を提案し、2006年欧州で発生した広域故障前の連系線潮流ならびに2015年日本における連系線(幹線)潮流の実測データを用いて提案法の有効性を示した。特に、従来のKMAアルゴリズムとの比較により、ベクトル・プローニ解析の電力システム解析に対する優位性を数値的ならびに理論的に明らかにした。 - 多機電力ネットワークにおける同期・周波数不安定性の診断を、エネルギー関数の分解に基づいて実行することを提案し、New England 39母線ベンチマークを含む複数のシステムモデルを用いて提案法の有効性を示した。 - 過渡電圧安定性に関わる電力ネットワークの動特性(状態のダイナミクス)と不安定性を観測データから直接診断するために、KMAアルゴリズムの1つであるExtended Dynamic Mode Decomposition(EDMD)を利用することを提案し、簡素なシステムモデルに対してEDMDの有効性を示した。 - 風力発電の平滑化効果に関する定量的尺度をKMAに基づき提案し、日本周辺における高解像度気象シミュレーションのデータを用いて提案尺度の有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の平成27年度終了時までの進捗状況について、上記研究実績を含めて以下に詳述する。 - KMAの新たなアルゴリズムであるベクトル・プローニ解析は、電力システムで扱うような空間サンプル数が時間サンプル数より少ない時空間系列データに対して優位なアルゴリズムであることを示した。本研究計画では、後述するPMU計測システムで得られたデータの解析を予定しており、これに用いるためのKMAアルゴリズムを平成27年度整備できた。 - 研究代表者の異動に伴い、実際に配備するまでに至らなかったものの、新規購入したPMUの動作確認を行い、次年度以降に国内に配備し、位相計測システムを構築し実測を開始するための準備を平成27年度終えた。 - エネルギー関数の分解に基づく周波数・同期不安定性の診断は、ネットワーク全体の需要・発電量などに関する予測データと個別発電プラントの電圧・位相などの実測データを統合的に用いることを目指したものであり、データ駆動型周波数・同期安定性診断と制御のベースになる結果である。また、電圧動特性のEDMDによる検討では、動特性を表す状態空間モデルの次元が既知であれば、状態の時間変化を観測データと見なすことで、モデルを用いることなく状態ダイナミクスとその不安定性を診断するものであり、データ駆動型電圧安定性診断と制御のベースとなる結果である。 - KMAに基づく洋上風力発電の平滑化尺度は、出力変動に関する統計的性質を仮定することなく、出力データのKMAから任意の時間・空間スケールに関する平滑化の度合いを定量化するものである。この定量的尺度は、日本のように広域連系ネットワークでウィンドファーム(WF)の導入に地域的偏在性を有する場合に、ネットワーク運用の時間スケールに応じて風力予測データから平滑化効果を測ることが可能となるので、WFの大量導入されたネットワークのデータ駆動型運用技術のベースとなる結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績を受けて、平成28年度以降の研究の推進方策について下記にまとめる。 - 購入済みのPMU4台ならびに新規購入予定のPMU1台を国内4カ所(東北、東京、大阪、北九州)に設置し、位相計測システムを整備するともに、実計測を開始する。 - 前年度に検討した周波数・同期不安定性の診断について、ネットワーク全体ならびに発電プラントに対するエネルギー関数の分解を用いて、予測・実測データを階層的に利用したネットワーク全体の周波数・同期安定性診断アルゴリズムを整備する。さらに、長時間電圧安定性のシミュレーションデータを用いて、EDMDに基づくデータ駆動型電圧安定性診断アルゴリズムを整備する。特に、一般に高次元となる電圧動特性の状態を扱うための方法を検討する。 - 前述の平滑化尺度を活用して、洋上WFが大量導入された広域電力ネットワークの運用技術を検討する。具体的には、周波数・連系線潮流データから需給ミスマッチ(Area Control Error: ACE)を検出するアルゴリズムをKMAに基づき検討する。そして、ACE、需要、風力予測データに基づく経済負荷配分、平滑化効果を考慮した安定性診断などに基づいて、発電所出力指令値を決定するアルゴリズムを検討する。
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Research Products
(9 results)