2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / フォトニック結晶 / ナノ共振器 / 高Q値化 / 2次高調波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではSiCフォトニック結晶の低損失化に取り組んでいる。近年Siを用いた光回路が大きな注目を集めているが、Siのバンドギャップは1.1eV付近であるため、光通信波長光に対して透明であるが、強い光が入射すると2光子吸収による損失が生じる等の問題がある。SiCは3eV程度の大きなバンドギャップをもつため、このような2光子吸収を抑制でき、その結果高強度の光を扱えるだけでなく、損失なく光非線形現象を発現できる可能性があるが、従来のSiCフォトニック結晶には原因が不明な線形光損失が存在し、そもそもの特性が不十分な状況であった。昨年度までの検討によりSiCフォトニック結晶を作製する際に必要となるSiC薄膜自体が線形光吸収をもつことが明らかになり、水素イオン打込みを用いずにSiC薄膜を作製することによってこれを避けることが可能であることが判明した。これによってSiCフォトニック結晶共振器の損失の少なさを示す指標であるQ値を、本研究開始前の30倍に向上(損失が1/30に低減)することに成功している。本年度はこのような高Q値化されたSiCフォトニック結晶共振器を用いて光非線形現象の増強に取り組んだ。光非線形効果としては、最も基本的な二時高調波発生を取り上げ、Q値17万のSiCフォトニック結晶共振器に光通信波長帯のレーザー光を導入し、その2次高調波である赤色の光の発生を確認した。その発生効率は1400%/Wと非常に高く、従来報告されている最大値430%/W(GaPフォトニック結晶共振器における報告)を大きく上回った。また、SiCフォトニック結晶共振器のQ値のさらなる向上にも取り組んだが、イオン注入を用いない機械研磨によるSiC薄膜の作製工程の歩留まりが悪く、十分な検討ができなかった。この点については、次年度に作製工程全般を見直し、歩留まり向上とそれに基づくQ値向上に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにSiCフォトニック結晶共振器の損失要因を明らかにし、またそれを避ける方法を考案して、損失を従来比1/30程度に低減することに成功している。またこのような損失が低減されたSiCフォトニック結晶共振器を用いて最も基本的な光非線形効果である2次高調波発生を試み、SiCの大きなバンドギャップによる2光子吸収の抑制と、本研究で達成された線形線形の低減と、そしてフォトニック結晶共振器による微小領域への高密度な光の閉じ込めとによって、従来報告を大きく上回る2次高調波発生効率を実証できている。このため、研究目的に沿っては順調な成果が得られているといえる。ただし、本研究で考案したイオン注入を用いないことによる低損失なSiC薄膜の作製方法は完全に確立しているとはいえず、その歩留まりの低さのため今年度はさらなる損失低減の成果を出すことができなかった。次年度はその点に留意して研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、現在、本研究で考案したイオン注入を用いず、機械研磨によってる低損失なSiC薄膜を得る方法の歩留まりが悪く、研究の進展を阻害している。具体的にはSiCを支持基板に貼り付けた後、機械研磨によって薄膜化していく工程において、かなりの確率で剥離が生じてしまうことが一番の問題である。今後は、貼り付け工程を様々な角度から見直し、剥離を抑制することで歩留まりを向上させる。その上で、最終的に薄膜となるSiC基板として、様々なものを試すことで吸収損失のさらなる低減を目指す。またそのSiC薄膜を用いたフォトニック結晶の作製工程の最適化も行い、総合的な低損失かを行う。その上で、強い光非線形効果の発現を狙う。
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Research Products
(8 results)