2016 Fiscal Year Annual Research Report
微弱電波帯ウェアラブル/インプラント統合BAN及びEMC試験法の研究
Project/Area Number |
15H04006
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
王 建青 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70250694)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安在 大祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40611116)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 通信・ネットワーク工学 / BAN / ヘルスケア・医療ICT / 電磁両立性(EMC) / インプラント通信 / ウェアラブルデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ウェアラブルBANとインプラントBANを10~50MHz微弱電波帯で実現させることと,BAN機器のEMCイミュニティ試験法を確立させることを目的としている. 平成28年度では,まず,ウェアラブル生体信号センシング電極とウェアラブル送信電極を共用する技術の開発を行った.本来,心電等のウェアラブル生体信号センシング電極と人体通信のための送信電極のそれぞれに別の電極を用いられるが,ウェアラブル/インプラント統合通信機の小型化を念頭に,センシング電極と送信電極の共用化技術を考案した.すなわち,ウェアラブル通信を最速10Mbpsで実現させることにより,生体信号センシングの合間にデータ伝送を行い,生体信号センシングとウェアラブル送信を時分割で行うことにより電極の共用を実現した.次に,ウェアラブル/インプラント通信を統合した微弱電波帯通信機の設計,試作及び検証を行った.前年度の検討で決定した変復調部の構成と仕様に従い,通信機のモジュール化設計と試作を行った.検証の結果,インプラント通信については,液体生体ファントム及びブタを用いた実験により,10Mbpsの高速通信では体内10cm,1Mbpsの中速通信では体内30cmまで,10^-3以下のビット誤り率が達成でき,実画像の伝送も実証された.また,ウェアラブル通信については,実際の心電図,筋電図を例として,人体がPCに触れることでウェアラブル伝送の検証実験を行い,その伝送品質は,市販の医療機器と同等な性能を有することが確認できた. これらの結果により,本提案の10~50MHz微弱電波帯統合BANの信頼性,実用性が立証された.なお,これらの成果は,学術論文3編,国際会議論文4編,特許1件にまとめられ,公表・出願された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の実施目標は,①ウェアラブル生体信号センシング電極とウェアラブル送信電極を共用する技術の開発;②ウェアラブル/インプラント通信を統合した微弱電波帯通信機の設計,試作及び検証である. それに向けて,①では,ウェアラブル通信機の2本の送信電極は信号線とグラウンドに接続される一方,生体センシング回路の2本の入力線はどちらも生体信号取得用の信号線であり,ウェアラブル通信機のグラウンド線とは電位が異なり,直接に接続することができない問題を解決するために,容量結合による接続技術を導入した.生体信号センシング電極を容量結合を通してウェアラブル通信機に接続することで電位差の問題を解決し,生体信号センシングとウェアラブル送信を時分割で行うことにより電極の共用を実現でき,通信機全体の小型化に寄与した. そして,②では,インプラントアンテナ部に磁性材を取入れて寸法が2cm×1cmの超小型化を実現し,ウェアラブル通信に電極を,インプラント通信に超小型アンテナを使用し,アンテナ・電極を除いた送受信機部を同一構成として,通信機の設計と試作を行った.また,試作品の微弱電波法の適合性についても3m電波暗室にて測定し確認した.試作された統合通信機を用いた検証実験の結果,液体生体ファントム及びブタを用いたインプラント通信においては,10Mbpsの高速通信では体内10cm,1Mbpsの中速通信では体内30cmまで,10^-3以下のビット誤り率が達成できた.また,実際の心電図,筋電図を用いたウェアラブル通信については,市販の医療機器と同等な品質の生体信号が取得されたことが確認できた. このように,平成28年度の目標は全て達成された上に,次年度実施予定のウェアラブル生体信号が発生できる擬似生体信号発生器の開発とEMC試験データの取得も着手し始め,それ故に当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では,開発した微弱電波帯統合BAN通信機のイミュニティ特性を向上させるとともに,国際標準化を視野に入れたEMCイミュニティ試験法を開発する. ①イミュニティ試験を実施可能とする擬似生体信号発生器の開発 イミュニティ試験の客観性を確保するために,心電や筋電等の生体信号を擬似的に発生する擬似生体信号発生器をまず開発する.前年度で開発した統合BAN通信機を用いて取得した生体情報をサンプル信号とし,それをマイクロコンピュータで制御し,信号発生器,ディジタル/アナログ変換器,フィルタ,アンプと組み合わせることによって,所要な擬似アナログ生体信号が任意に発生できる発生器を開発・構築する. ②BAN通信機に対するイミュニティ試験法の開発と国際標準化提案 まず,イミュニティ試験の基礎データとして,前年度で開発した微弱電波帯BAN通信機を用いて取得する.具体的には,IECのESD試験法に則り,ESD試験器を用いて,BAN機器の誤動作を試験する.次に,擬似生体信号発生器から発生した生体信号のウェアラブル伝送を擬似人体上で行う測定系を構築する.これに対するESDイミュニティ試験を実施し,実人体試験データとの相関性や類似性を検証しながら,それを類似性高く再現できる擬似測定系の構成を解明する.最後に,ヘルスケア・医療BAN機器のイミュニティ評価法の確立とともに,本研究で開発した微弱電波帯統合BAN通信機のイミュニティ向上策を検討する.そして,イミュニティ試験を通し,ESDによるBAN通信機への侵入経路を明らかにし,それを防ぐモジュール設計指針を導き示すことで,安心・安全・高信頼性の微弱電波帯ウェアラブル/インプラント統合BAN通信技術を確立する.
|
Research Products
(10 results)