2015 Fiscal Year Annual Research Report
短周期変動波浪が重合した津波や高潮による氾濫域被害増大特性の解明とその減災対策
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15H04046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田島 芳満 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20420242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下園 武範 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452042)
佐藤 愼司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90170753)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 段波 / 津波 / 高潮 / 高波 / 砕波 / 漂流物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年間で以下の6つのサブテーマにそれぞれ取り組む計画となっている.①マルチスケール波浪重合場再現装置の開発、②マルチスケール波浪重合場再現モデルの構築、③津波・高潮・高波重合場の伝播・氾濫実験、④津波・高潮・高波重合場の氾濫特性の整理、⑤被害評価指標の構築、⑥氾濫域減災対策の考案および検証。これらのサブテーマのうち、研究初年度にあたる平成27年度には、サブテーマ①に相当する平面水槽における段波発生装置の構築と、③の実験、②のモデル構築に取り組み、計画以上の成果を出すことができた。段波造波装置の構築では、計画に従ってポンプ式、チャンバー式、ゲート式造波装置を検討し、造波装置施工業者を交えた照査からゲート式の構造の方が、規模や施工性、汎用性、段波の再現性の点で有利であると結論づけ、ゲート式の造波装置を構築した。造波装置は組み立て式とし、水槽内の任意の地点に造波機を設置することができるようにした。さらに、ゲートの開閉にはコンプレッサーを用い、ゲートの開閉速度の再現性を向上させた。 構築した造波装置を用いた実験を行い、平面水槽内に造波された段波に高い再現性があることを確認した。また実験条件を再現する数値モデルも構築し、ゲートの開閉速度を考慮した造波境界を与えることにより、実験で計測した段波の波形を精度良く再現できることを確認した。さらに、平成28年度には、平面水槽を一部拡幅して氾濫域を広げ、氾濫域内に設置した漂流物群の挙動を観察する実験を実施するとともに、漂流物と氾濫流の相互干渉による影響を考慮した氾濫場の再現モデルの構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果の概要にも示した様に、計画していた造波装置の試作とその検証については、ゲート式段波装置を構築することによって、想定していた規模の段波の造波に成功し、さらに、造波した段波には高い再現性があることも確認した。さらに、氾濫域における氾濫流の挙動だけでなく、漂流物との相互干渉に関わる実験も実施し、その再現モデルの構築も試みており、当初計画よりも良好な進捗状況にあると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度(平成27年度)の研究において,平面水槽に段波発生装置を構築が完了し造波した段波に十分な精度の再現性があること,平面水槽において十分な規模の段波を発生させることができることを確認した.平成28年度は,この段波発生装置および平面水槽に既に設置してある平面造波装置を用いて,津波・高潮・高波重合場の伝播・氾濫実験を行う。氾濫実験では、既有のアタッチメント等を用いて平面水槽内の斜面勾配を変化させて氾濫域を再現し、さらに海岸堤防や道路や鉄道による二線堤などを加えたモデル地形を製作する。これらの構造物や微地形を含む氾濫域における水理特性を定量的に捉え、実験結果を通じて構造物や微地形による減災効果を分析するとともに、数値モデルの検証データとしても活用する。 モデル地形上の氾濫特性は、実験および数値解析の両者の結果に基づき整理する。また、ここで分析する氾濫特性は、被害指標の構築とそれに基づく被害評価に用いることを念頭に置いており、例えば浸水深、流速、浸水までのリードタイムなどの、被害評価に必要であると考えられる項目を列挙し、それらの特性を定量的に抽出する。以上の分析には、東北地方太平洋沖地震津波などの甚大な氾濫災害における実際の被害状況に即した検討が必要となる。そのため、本項目の検討については、東日本大震災における被災調査し、かつ、その成果を幅広く収集してデータベース化したプロジェクトに主導的に携わった佐藤(研究分担者)が主に担当する。ただし、本項目は、実験や数値解析とも密接にかかわるため、下園、田島も検討・分析に加わる。
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Research Products
(4 results)