2016 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少・高齢社会における地域創生に向けた年齢階層別人口動態の把握
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15H04056
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
森地 茂 政策研究大学院大学, 政策研究科, アカデミックフェロー (40016473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 直彦 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (10318206)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域創生 / 人口移動 / 少子高齢化 / 一極集中 / 限界集落 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、全国市町村の人口構造変化の特性を分析し、その地域類型別の地域活性化策の要件を明らかにして、地域創生政策の基礎的知見を得ることを目的としている。 平成27年度は、人口減少下でも生産額、一人当たりの所得を向上させている生活圏が多くを占めることを確認した。 平成28年度には、前半に全国の多種データの変動傾向を視覚的に理解できる方法と、地域類型化を数理統計的に行う方法とを検討し成果を得た。また、前年度に続き全国の市町村と生活圏の人口と経済統計の分析を行い、サブプライム世界不況の影響で平成19-21年は全国的に生産額が落ち込んでいるが、それ以降も回復しない地域の対全国比は、生活圏数で15%、生産額で5%未満であることを確認した。産業統計より全国生活圏の産業別生産額の分析の結果、卸小売業の低迷が影響していること、しかし、卸小売業も含め各産業共に雇用者一人当たり生産額は上昇している生活圏がほとんどであることも確認できた。卸小売業と宿泊業について、事業所数が減少しているのは主に小規模企業であり、跡継ぎのいない家族経営の事業所であると考えられ、住民サービス低下との関係については更なる検討が必要である。 次に、人口増減を横軸に、生産額を縦軸にとり、4つの象限毎に属する全国生活圏について、その時系列変化を類型化した。 また、地域活性化に貢献している観光に関し、高齢化と若年層の観光行動減少で国内市場が縮小するとの議論が多かったのに対し、各都道府県への来訪者を、多い発地都道府県別に棒グラフとして並べ、各棒を若年層、就業層、高齢層に分割した上で、それぞれ年齢別の住民一人当たり観光発生量の増減で色分けした。これは、各観光地でどの地域のどの年齢層を対象にマーケティングを行うかについての情報として有効である。 地域創生策については、各地域で展開されている事業を整理して、次年度の分析の準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人口減少が、経済を縮小させ、一人当たり所得も減少するとの論議が多く、この先行きの成長への悲観論がデフレの最大の原因である。本研究は全国市町村について、その実態を明らかにし、各地域の活性化のための基礎資料と知見を得ることを目的としている。 人口減少については、大学進学時、就職時の流出入の差異が、生活圏ごとに顕著である。年齢別人口とその増減をグラフ化し、それを類型化することにより全国生活圏の人口特性を分析した。次に、必要なデータの公表されている全国市町村をまとめた生活圏の分析から、人口減少以上の生産性向上を実現している生活圏がほとんどであることを明らかにした。また、各地域の不況の原因の一つは平成19-21年の世界不況であり、その後はデフレによる卸小売業の生産額減少が原因で地域経済が縮小している地域が多い。特に、県庁所在都市については、約半数が人口減少であるが、生産額は5都市を除いて増加傾向にあり、うち3都市は卸小売業の減少分を除くとプラスに転じることが判明した。人口減少と生産額の増減率を横軸、縦軸にとって、各象限に入る生活圏ごとにその経済構造、生産額の時系列変化による類型化を行った。同様に縦軸を一人当たり生産額にした分析と類型化も行っている。経済構造分析とは、それぞれの生活圏の産業分類別生産額の時系列変化分析などである。 また、膨大なデータを視覚的に理解するための方法と地域類型化の方法についても成果を得ている。上記の地域分析結果と実施中の地域創生策とを合わせ検討する材料と知見はおおよそ整った。 25年度の国勢調査結果の発表が遅れたため、その追加分析はできなかったが、上記のように、研究目的と研究の年次計画に対して、順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、25年度の国勢調査結果の地域間移動データを用いて、これまでの分析結果を更新して、考察を加える。 以下、第1に全国都道府県、市町村、および生活圏について、年齢階層別人口、生産年齢人口、産業別人口と各産業分類別生産額等産業統計を合わせて、より詳細な地域類型化を行う。 第2に、各地域の地域創生事業と上記地域類型との関係を検討する。これまで実施してきた定量的な分析の結果を基に、地域活性化に詳しい研究者や実務家との意見交換を行い、また、いくつかの自治体を対象に、地域創生事業に期待する効果と今後の展開についての調査を実施する。 第3に、上記類型化された市区町村の空間的位置関係に着目し、どのような地域単位で政策を実施すべきかを検討する。 以上により、3年間の本研究の成果をまとめ、今後の地域創生策への提言をまとめることとする。
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Research Products
(5 results)