2015 Fiscal Year Annual Research Report
福島第一原発事故による避難指示区域への住民帰還のための除染評価手法の開発
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15H04068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 洋子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00314237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 稔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40182852)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 除染 / セシウム / 空間線量率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、市街地および森林の除染効果の評価手法を確立するために、まず、これまで実施された環境省や自治体による除染事業での住宅地、道路、農地、森林、公共施設等における除染前後の空間線量率データ、除染時期、除染場所(傾斜、植生・樹種(広葉樹、針葉樹等)、土壌種)、気象(降水量、測定時の天候)、作業内容(測定方法、作業監督者・作業員の熟練度)に関する情報を収集・整理し、市街地と森林の除染効果に影響を及ぼしている要因の分析を行えるようにデータベース化し、このデータベースを用いて、除染前と除染後の空間線量率と空間線量率の低減率の関係を分析するとともに、森林地域については、植生に関する地理情報、現地における放射性セシウムの深度分布調査等により、森林除染の効果に及ぼす要因に関する分析を行なった。その結果、除染前の空間線量率等が高いほど、空間線量率等の低減率は高くなったが、ある程度の空間線量率等以上では、低減率がほぼ一定となった。除染前の空間線量率等の測定時期については、各月ごとに多少の増減はあったものの、全体的には減少傾向にあった。また、植生図を用いて、樹種ごとの空間線量率等の低減率を分析したところ、落葉針葉樹植林の低減率が他の樹種と比較して大きく、常緑針葉樹植林が低いなど、樹種ごとにも差が見られた。放射性物質の深度分布について、現地調査を行ったところ、樹種ごとに深度分布が異なっており、浸透の程度と、1cm空間線量率及び表面汚染密度の低減率との間に強い相関が見られた。また、森林における除染は地表面の堆積有機物層の除去を中心に行われているが、放射性セシウムが徐々に鉛直方向に浸透していることから、森林における除染効果の評価には、堆積有機物層や土壌層への浸透のメカニズムを把握することが必要であることから、森林土壌のサンプリングを行い、土壌中の粘土鉱物によるセシウムの吸着容量の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、市街地および森林の除染効果の評価手法を解析し、また、除染費用の構造解析およびシナリオ分析を行った上で、これらの成果を土台に、除染効果と費用を考慮した最適な除染計画を策定するためのモデル構築を行い、最終的に現在実施されている除染の評価と今後の最適除染計画の検討を行う予定をしている。 本年度は、市街地および森林の除染効果の評価手法を確立するために、これまで実施された除染前後の空間線量率データの解析を行い、評価手法の確立を目指した。特に、森林地域については、植生に関する地理情報、現地における放射性セシウムの深度分布調査等により、森林除染の効果に及ぼす要因に関する分析も行い、さらに、森林における除染効果の評価には、堆積有機物層や土壌層へのセシウムの浸透メカニズムを把握することが必要であることから、森林土壌のサンプリングを行い、土壌中の粘土鉱物によるセシウムの吸着容量の測定を行った。当初の計画では、本年度中に、除染効果の評価手法をめざして、森林生態系における放射性物質の挙動を評価するモデルの構築にとりかかる予定であったが、森林土壌の現地調査やサンプリング・分析に時間がかかり、来年度へ持ち越すことになった。また、本年度の研究成果の学会誌への発表は来年度に行うこととなった。しかしながら、研究の進捗状況は全体的にみておおむね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の成果をベースに、市街地および森林の除染効果の評価手法を確立し、除染費用の構造解析およびシナリオ分析を行った上で、これらの成果を土台に、除染効果と費用を考慮した最適な除染計画を策定するためのモデル構築を行い、現在実施されている除染の評価と今後の最適除染計画の検討を行うという最終目標に到達させる予定である。研究初年度である本年度の研究成果については、来年度早い時期に学会誌において論文として発表する予定である。特に、森林地域における除染効果の評価手法を確立することは、社会的に早急に必要とされている知見を提供することに直結することから、その研究成果の公表は、速やかに行う予定である。同様に、来年度に取り掛かる予定の除染費用を考慮した最適な除染計画策定のためのモデルの構築も、住民の帰還のために急がれる効果的な除染作業遂行のために可能な限り早く取り組み、その成果を発表することで、帰還に際しての住民とのリスクコミュニケーションに貢献できるようにする予定である。
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Research Products
(2 results)