2016 Fiscal Year Annual Research Report
福島第一原発事故による避難指示区域への住民帰還のための除染評価手法の開発
Project/Area Number |
15H04068
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 洋子 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00314237)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (40182852)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 福島第一原発事故 / 除染 / セシウム / 空間線量率 / ウェザリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に取り組んだ、除染前と除染後の空間線量率と空間線量率の低減率の関係の分析結果(2016年12月に学会誌に発表)を踏まえて、森林土壌や市街地の道路表面におけるバックグラウンド放射線による影響と除染後のウェザリング効果による減衰効果を評価することにより放射性物質の表面残存状況を定量的に把握できるモデルの構築をめざした。具体的には、森林、舗装道路および未舗装道路の除染実施前の表面線量率と表面汚染密度の測定値(2012年9月-2014年12月)を用いて散布図を作成してその関係を検討した。その結果、いずれの月についても、舗装道路については、低い表面線量率であっても、表面汚染密度は高い値を示す傾向がり、森林や未舗装道路の表面汚染密度は低い値を示した。また、作成した散布図を基に、表面における放射性セシウムの残存状況を示す指標(SRI値)を定義し経時変化を確認したところ、森林や未舗装道路では、放射性セシウムの沈着後約1年半が経過した段階で既に土壌等の表面にはほとんど存在せず地下方向にある程度浸透していたが、舗装道路では、依然として物質の表面に残存している可能性が示唆された。 本研究は、住民帰還の前提となる年間20 mSv以下に低減させるための最適な除染計画を除染効果と費用の面から検討することを最終目的としているが、その検討の際に、帰還時に、計画被ばく状況における平常時の公衆被ばくの線量限度である1 mSv/年より被ばく量が多くなることによる住民の帰還へのためらいに対するリスクコミュニケーションに必要と判断し、本年は、さらに、誕生から生涯にかけて1 mSv/年を被ばくし続けた場合とリスク等価となる帰還時の空間線量率を、性・年齢・職業別の個人分類ごとに推定した(2016年12月に学会誌に発表)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、市街地および森林の除染効果の評価手法を解析し、また、除染費用の構造解析およびシナリオ分析を行った上で、これらの成果を土台に、除染効果と費用を考慮した最適な除染計画を策定するためのモデル構築を行い、最終的に現在実施されている除染の評価と今後の最適除染計画の検討を行う予定をしている。 本年度は、森林土壌や市街地の道路表面におけるバックグラウンド放射線による影響と除染後のウェザリング効果による減衰効果を評価することにより放射性物質の表面残存状況を定量的に把握できるモデルの構築をめざして、森林、舗装道路および未舗装道路の除染実施前の表面線量率と表面汚染密度の測定値を用いて散布図を作成してその関係を検討した。さらに、本研究の成果を、帰還に際しての住民とのリスクコミュニケーションに貢献できるようにするために、帰還する住民を性・年齢・職業別に分類し、各個人分類について帰還時の空間線量率がいくらであれば、平常時における最大のリスクである誕生から生涯にかけて1 mSv/年を被ばくし続けた場合とリスク等価となるかの推定も行った。 当初の計画では、研究実績の概要で示した、表面における放射性セシウムの残存状況を示す指標(SRI値)を時間の関数として、森林土壌や市街地道路の表面の放射性物質の残存状況を把握する評価手法を本年度中に確立する予定であったが、本年度は、帰還時の住民とのリスクコミュニケーションを見据えたリスク評価に時間を割いたこともあり、その確立を来年度へ持ち越すことになった。しかしながら、しかしながら、本年度に実施した研究の成果はすべて本年度中に論文にまとめて学会誌に発表し、研究の進捗状況は全体的にみておおむね予定通りである。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度であり、本年度までに得られた成果をベースに、森林土壌や市街地の道路表面におけるバックグラウンド放射線による影響と除染後のウェザリング効果による減衰効果を評価することにより除染方法、除染対象物、線量等の除染効果に影響を及ぼす要因ごとに放射線量の低減率を時間の関数により評価できるモデルを完成させ、除染費用の構造解析およびシナリオ分析を行った上で、これらの成果を土台に、除染効果と費用を考慮した最適な除染計画を策定するためのモデル構築を行い、このモデルを用いて、現在行われている除染事業の効果について評価するとともに、今後の除染計画に関しての複数のシナリオ(除染方法、目標時期の変更、森林除染範囲の拡大などの想定を行う)を設定し、その除染効果と総費用の変化を推定することにより、その有効性を明らかにし、避難指示区域への住民の帰還の前提となる除染が効果的に実施されるための最適な除染計画を立案するための有用な知見を、学会発表や、特に被災地の住民に向けて講演等の機会などを利用して提供できるようにする予定である。
|
Research Products
(4 results)