2015 Fiscal Year Annual Research Report
津波漂流物の衝突が建築物の応答に及ぼす影響とその作用荷重評価に関する研究
Project/Area Number |
15H04072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中埜 良昭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10212094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崔 琥 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40512009)
松川 和人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50709186)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 津波 / 建築構造・材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,①津波避難ビルに想定すべき合理的な設計用荷重の解析的検討,②津波避難ビルに要求すべき軸力保持能力に関する実験的検討,③実地調査に基づく想定津波漂流物の把握,の3点に注力して研究を行った。 ①では,津波避難ビルの津波漂流物衝突時の弾性応答を簡易的に評価する手法の開発を行い,その妥当性を動的解析結果と比較することで確認した。開発された評価手法は,津波漂流物として船舶を想定し,その衝突時の外力波形が矩形パルス波となることに着目し,それに対する応答を一般の振動理論式を簡略化することで導出したものである。 ②では,津波避難ビルでよく用いられる鉄筋コンクリート造柱を対象とした加力実験を行った。本実験では,1/4スケール程度の柱試験体を製作し,軸力と水平力を作用させることで破壊に至らしめ,その軸力保持能力を計測した。また,柱の軸力保持能力を理論的に評価するモデルの構築を行い,実験結果と比較を行った。その結果,構築した軸力保持能力評価モデルは,従来のモデルと比べて高い精度を有していることが明らかとなった。 ③では,静岡県の港湾を対象として,津波襲来時に津波漂流物となりうる船舶の滞在状況を調査した。調査においては,船舶の滞在時間や規模等を記録し,船舶規模ごとの平均船舶停泊数を当該港湾について算定した。その結果,総トン数500トン以下の船舶が大部分を占めることが明らかとなった。また,調査した船舶について,船舶明細書からその喫水を特定し,津波襲来時の陸上への遡上可能性についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
津波漂流物の衝突時間が,津波避難ビルに作用する荷重に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり,遅れが生じた時期もあったが,現在は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成27年度に実施した研究をさらに発展させ,津波漂流物衝突時の弾塑性領域を含めた応答評価,ねじれ応答評価,津波波力を含めた複合外力に対する応答評価など,より複雑な荷重作用下における応答評価に注力して研究を行う。また,軸力保持能力評価モデルの適用範囲の確認を進めるため,新たに柱の破壊実験を行う。 加えて,津波漂流物として想定される船舶の実設計時における特定手法がいまだ未解明であるため,その手法についても検討を進める予定である。
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