2015 Fiscal Year Annual Research Report
制振と免震のハイブリッド化による建築構造物の総合的なレジリエンス向上に関する研究
Project/Area Number |
15H04079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹脇 出 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20155055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 聖晃 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00243121)
藤田 皓平 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40648713)
吉富 信太 立命館大学, 理工学部, 教授 (30432363)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジリエンス / 免震 / 制振 / ハイブリッド構造 / 断層近傍地震動 / 長周期地震動 / ダブルインパルス / 動的安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
レジリエントな建築構造としての免震と連結制振のハイブリッド構造について、それを合理的に誘導する感度解析に基づく方法を提案した。新たに導入した振動実験設備を用いて多段免震の振動台実験を行い、その効果を実験・解析の両面から明らかにした。 断層近傍地震動をダブルインパルス等に置換し、完全弾塑性型の1質点系モデルの共振状態に対応する「極限的ダブルインパルス」と、その弾塑性応答の閉形表現を導出した。従来、正弦波等の入力に対して建物を等価線形モデルに置換する手法が一般的であり、共振応答の導出に多数回の繰り返しが必要であったのに対して、提案手法では、閉形解の導出が可能となった。 断層近傍地震動だけでなく、長周期・長時間地震動をマルチインパルスで近似する方法についても検討し、弾塑性構造物の塑性変形成分を極大とするような「極限的マルチインパルス」とそれに対する弾塑性応答の閉形表現を導出した。 極限的ダブルインパルスに対する弾塑性応答の閉形表現をスウェイ・ロッキングモデルに拡張し、地盤との動的相互作用を考慮した弾塑性極限応答の本質的な応答特性を明らかにした。さらに、極限的ダブルインパルスに対する完全弾塑性モデルの最大変位応答の閉形表現を、バイリニア型復元力特性モデルに拡張した。特に第2剛性が負の場合(P-Δ効果)の動的安定性のクライテリアの提案を行った。そのクライテリアは、初期弾性時の剛性に対する第2剛性の比と建物の強度に対する入力地震動のレベルの比の関係として閉形表現が可能となっている。 地盤特性のばらつきを想定した上で、建物-杭-地盤系における杭の地震時応答を最大にするような地盤特性の組み合わせを見出す方法を提案した。これにより最悪なケースを想定したロバスト性、冗長性に優れた建物や杭の設計が可能となる。また、深い地下構造を考慮した場合のSRモデルへの地震入力エネルギーの評価法へと発展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請計画の段階では、断層近傍地震動をダブルインパルス等に置換することの有効性が不明であった。しかし、研究を進めた結果、これまで多数回の繰り返し計算を必要とした共振応答の計算が1回の計算で求められることが明らかとなった。このような弾塑性構造物モデルの共振応答を閉形表現で求める研究はこれまでに皆無であり、世界的視野において極めて独創的かつ有意義なものとなった。この成果を纏めた論文は、査読付き国際専門誌’Frontiers in Built Environment’に受理され、2015年7月のOpen Access出版以来多数のアクセスを獲得した注目論文として2015年8月にFrontiers出版のWeb Main Pageに掲載された。 また、レジリエントな建築構造の代表例としての免震と制振(連結制振)のハイブリッド構造について、その構造システムを合理的に誘導する方法の開発は当初の計画にはなかったが、その他のレジリエントな建築構造を見出す方法の先駆けとして極めて有効であることが明らかとなった。 さらに、多段免震構造や、多段免震と連結制振のハイブリッド構造を扱うことは当初の計画になかったが、それらを詳細に解析した結果、高い免震・制振効果を有することが判明し、重要構造物の設計において有効な構造システムであることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
想定を超えるレベルの断層近傍の地震動や、深い地下構造が明らかでないが故に大きな不確定性を有する長周期・長時間地震動に対して、超高層建物の構造安全性を一層高い信頼性のもとで明らかにすることは喫緊の課題である。特に、最近多数建設されている超高層免震建物の転倒に対する安全余裕度を解明することは重要である。現在、剛体のロッキング振動とそれに伴う転倒に関する限界についての新しい理論展開を行っており、ダブルインパルスを用いた画期的な理論を展開しつつある。この理論をさらに発展させ、1960年代から問題提起されてきた「建築構造物のスケール効果(大きな構造物ほど地震に対する安全性が高いこと)」を定性的かつ定量的に明らかにしたいと考えている。 また、不確定な要素を含む構造システムの地震動に対する応答のばらつきを定量的に見出す効率的な方法をさらに発展させ、遺伝的アルゴリズム等を用いた評価システムによりその信頼性を明らかにしたいと考えている。 さらに、多段免震構造や、多段免震と連結制振のハイブリッド構造について振動実験により理論の妥当性を明らかにしたいと考えている。
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