2015 Fiscal Year Annual Research Report
電気・ガス・水道消費量の大規模HEMSデータによる用途分解手法構築と省エネ提案
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15H04088
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井上 隆 東京理科大学, 理工学部, 教授 (30151608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 幸造 東京理科大学, 理工学部, 助教 (20739148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 集合住宅 / エネルギー / ガス / 水道 / 電力 / 給湯 / 暖房 / 戸建住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、温暖地の住宅の用途別エネルギー消費量のうちの最大用途である給湯において、電力・ガスのみならず水道も同時計測することで、ガスと水道が同時に消費された際に給湯と判定することを基本とする手法を構築し、給湯・調理・温水暖房といった用途ごとの使用実態の把握を行った。調査対象は、首都圏の集合住宅(ガス併用住宅800件超、および全電化住宅500件超。電力・ガス・水道消費量計測:10分間隔)および戸建住宅(ガス・水道消費量計測:1秒間隔を2件、電力消費量計測:1分間隔を5件、室内外温度計測:1分間隔を5件、広角熱画像カメラを用いた暖房時室内表面温度分布計測:10分間隔を2件)である。電気・ガス併用集合住宅と全電化集合住宅に関して、最寄りの気象官署における日平均外気温と日積算1次エネルギー消費量の比較において同傾向であった。また、電力・ガスの用途推計手法について検討を行い、10分間隔での給湯消費エネルギー量を概ね把握可能なことを確認した。別途計測した戸建住宅の1秒間隔データに基づく検討では、温水暖房利用時の用途推計には課題が残るものの、給湯のみ利用時には10分間隔データのみでも比較的高い精度で推定が可能であった。集合住宅の一部世帯を対象としたWEBアンケートでは、給湯・暖房の使い方や世帯属性、省エネ行動の実行度に関する調査を実施した。両集合住宅に設置されているエネルギーモニタリングシステムの利用実態や省エネ意識・行動の把握を行ったうえで、エネルギー消費量との関係について分析を行った。モニタリングシステムについては、入居直後は頻繁に閲覧するが、月日の経過とともに閲覧回数が減少していた。関心の高い消費量は、冷暖房・家電・給湯・照明の順であった。また、省エネ意識と消費量の分析からは、省エネ意識の高い世帯ほど暖房消費量が小さく、省エネ意識の低い世帯ほど冷房消費量が大きいことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、集合住宅を対象として数百件分の年間データを取得し、用途分解手法の検討をすることができた。さらに、戸建住宅における1秒間隔でのガス・水道配管の流量・温度データの詳細計測を開始し、集合住宅と同様の10分間隔データによる用途推計手法の精度検証が可能となった。その結果、温水暖房用途の推計には課題が残ったものの、給湯のみ使用時には高い精度で推定が可能であることが確認でき、一定の成果があったといえる。また、全電化集合住宅と電力・ガス併用集合住宅における用途別エネルギー消費構造の類似性についても明らかとなった。一方で、今回検討している用途分解手法では、全電化住宅におけるヒートポンプ式給湯器による深夜時間帯以外の沸き増しや温水暖房のエネルギー消費量については把握しきれていない。また、電力・ガス併用住宅においても、冬期の温水暖房と給湯の同時使用におけるガス消費エネルギー量の按分をどのように行うかについても課題がある。なお、戸建住宅では2件でガス・水道配管の詳細計測を行っているが、うち1件では計測機材のトラブルにより有効なデータが取得できていないため、次年度の改善を要する。また、初年度は集合住宅を対象としたアンケート調査を実施したが、戸建住宅においてはアンケートを実施できておらず、今後の課題となる。エネルギー消費量だけではなく、室内で実現されている温熱環境がどのようになっているかも評価するべきではあるが、計測対象住戸を選定して計測機材の設置工事を行うのに時間を要したため、初年度は戸建住宅5件の温度データと2件でのリビング熱画像の評価を行ったのみであった。今後はより多くの世帯を対象として、夏期・中間期・冬期の通年評価を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は以下の内容についての検討を行う予定である。 1.住宅における用途別エネルギー消費量の評価方法の構築: 大規模な電力・ガス・水道3点のHEMSデータと数件の詳細実測データを併用した、用途別エネルギー消費量推計手法の精査を行う。前年度までに、ガス併用集合住宅約500世帯の10分間隔のHEMSデータ、全電化集合住宅約300世帯の10分間隔のHEMSデータ、戸建住宅における1秒間隔の詳細データ(電力、ガス流量、水道・暖房配管流量や温度等)の計測を開始しており、これらのデータを用いることとする。また、推定された用途別エネルギー消費量を用いた消費エネルギー実態の把握では、上記検討にて評価されたエネルギー消費量データから、各世帯の属性ごとのエネルギー消費構造の特徴を明らかにする。さらに、高性能外皮・高性能設備機器を採用した近年の住宅の温熱環境評価では、夏期・冬期の集合住宅および戸建住宅の温熱環境実態を評価する。 2.調査対象住宅における居住者ライフスタイルの把握:アンケートによる居住者ライフスタイル把握とエネルギー消費等との相関分析を行い、居住者のライフスタイルの把握と居住環境への満足度の評価を行う。(1-b),(1-c)によって分析された居住者属性の判定結果の裏づけとなるデータとして、アンケート結果等を用いる。 3.省エネ提案とHEMS開発提案:1,2の検討内容によって得られた知見を基に、調査対象世帯に向けた省エネ提案内容を検討する。また、居住者が無理なく楽しく省エネ行動を実践するための取り組みとして、ゲーミフィケーションを取り込んだ省エネ行動の啓発効果を検証する。調査対象としている集合住宅では、インターホンモニターやSNSを通じて、居住者の自宅の省エネ達成度がモニタリングできるシステムを採用しており、こうしたシステムも適宜活用しながら省エネ提案を実施していくことを検討する。
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Research Products
(1 results)