2015 Fiscal Year Annual Research Report
北海道沿岸部における先住民/移民の漁場を下敷きとする歴史基盤の構築に関する研究
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15H04108
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
三宅 理一 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (70157618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊井 義人 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (10326605)
小澤 丈夫 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20399984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 厚田場所 / 開港地 / 開拓使施設 / 龍澤寺文書 / 縮小する漁港 / イマジナリー厚田 / 創造的歴史基盤 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)文書の発掘と整理:道立文書館所蔵の関係文書ならびに龍澤寺文書の整理を行う。開拓使関係の文書は比較的良く残っており、幕末から明治初期にかけての厚田(古潭)の動きを、かなり正確にトレースすることができた。港湾、行政施設に関しても地図情報を介してプロットが可能であった。 (2)厚田の都市・建築調査:厚田・古潭の曹洞宗寺院(正願寺・龍澤寺)の実測調査(7月)と図面化を行い、前者については完成、後者について一部を2016年度に持ち越す。龍澤寺に関しては、文書ならびに実測の結果から明治初期の開拓使役宅を転用した可能性が高く、今後その検討を行う。 (3)港町の比較研究:函館については函館市立図書館・道立文書館の文書の整理ならびに現地関連機関のヒヤリングを行う(7月)。幕末の開港地としての箱館の位置づけと、その西海岸への波及が大きなテーマとなり、2016年度の課題を明確化した。舞鶴に関しても縮小地域の港町をテーマに比較検討を行い(2月)、都市計画・地域ガバナンスのあり方について意見交換。人口縮小にもかかわらず、漁港のもつ「レジリエンス」が指摘された。 (4)厚田における地元小中学校とのワークショップ:藤女子大学の地域学習支援プログラム(SAT)ならびに海外提携校との共同研究の枠組みを使い、学生を定期的に派遣し、さらに日本・ロシア・フィリピンの講師のもとに地域の想像力を介した町のイメージづくりを行った(7月)。その成果を下敷きに住民の意見交換会、教材開発を実施。 (5)国際シンポジウムの実施:ワークショップ参加の講師を核にして「イマジナリー厚田:地域の創造基盤の構築をめぐって」を実施(7月11日)。同時に同名の展覧会を制作、札幌、厚田を巡回。シンポジウムでは、北海道の事例(美瑛)、北方圏の街づくりと文化基盤(露)、アートによる街づくり(比)、厚田ワークショップの内容を論じることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)文献調査は、既に予備調査によって古文書の所在地、収蔵先等がある程度把握されているので、概ねプログラム通りに調査が進んでいる。 (2)図面づくりは、若干の遅れがある。1件に関し、5-6名の学生チームが貼りついて数日間の実測調査をしなければならない(加えて図面化のために膨大な作業が控えている)が、授業時間の合間をとって実施可能の日程が限られてくる。2月3月は積雪期で調査が不可能なことも大きく響く。 (3)地元での作業、ワークショップについては予定を消化している。地元教育委員会の積極的な関与で実施の段取りがスムーズに進み、小中学校とのコミュニケーションが進んだ。ただ、問題として、過疎地ゆえ、小中学生数がきわめて少なく、作業の時間的負担が直接小中学生ならびに担当の教員にかかるという点が指摘される。 (4)成果発表については、研究会議、国際シンポジウムを予定通り開催できたことで順調に進んでいるが、成果物の報告書については、2016年度に持越している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)文献調査:古文書、図面の収集は。現在に至るまで順調に進んでおり、地域の歴史を広範囲な圏域(蝦夷地・北海道のスケール)で把握することが可能となっている。2016年度は、対象を拡大して増毛の文書についても収集を進める予定であり、北海道西海岸の都市形成へのより広いビジョンを獲得する。 (2)建築調査・都市調査:厚田については、2016年度に寺院の残り(龍澤寺)、住宅(佐藤邸)の調査に取り掛かる。増毛についての調査はその次の段階であり、予備調査を含めて2016年春から作業に取り掛かる。 (3)「歴史基盤」を活用システムづくり:都市・空間を下敷きとした「歴史基盤」を地域再生のために活用できるツールとする。住民サイドの活用を容易とするため、ソフト面を含めたシステムづくりが次の課題となっている。そのため、「フューチャースクール」を見据えて、タブレットとデジタル化したパッケージの利用など、小中学校と連携した活用方法の検討が必須である。 (4)教材づくり:地域のイメージづくりを必ずしも「大人」のバイアスを経ない、つまりは既成の価値観に捉われない、子供の眼でみた「面白く刺激的な」まちづくりの試行として進めることが今回の目的のひとつである。そのため、2015年度の実験(イマジナリー厚田)を下敷きに新たな教材づくりを行う。成果物としては絵本が予定され、それ自体を「もうひとつの厚田」として広く公開する。
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Research Products
(10 results)