2015 Fiscal Year Annual Research Report
電子論に基づく構造材料の巨視的特性の階層的機構解明
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15H04117
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐原 亮二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (30323075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 浩一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 拠点長 (50236907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 耐熱鋼 / 微量添加ホウ素 / 生成エネルギー / 界面モデル / M23C6 |
Outline of Annual Research Achievements |
省エネルギーと環境保全のため二酸化炭素排出の抑制をめざして、従来の火力発電より高温側で使用される耐熱鋼の開発が進められている。9Cr鋼に微量のホウ素(B)を添加することにより、クリープ特性が改善される他、溶接後の組織変化が少なく熱影響部においても母材と同等の組織を有することが、実験的に確認されている。 本研究では、このような微量添加ホウ素の効果の起源を理論的に明らかにすることを目的として、大規模第一原理計算を系統的におこなった。つまり、本耐熱鋼において生成される析出物(炭化物)M23C6に着目し、析出物にBが取り込まれる事によって相安定性がどのように変化するかを、生成エネルギーを評価することにより評価した。具体的には、(Fe,Cr)23(C,B)6という最大4元系の析出物について、生成エネルギーの等高線図を求めた。その結果、計算した全(Fe,Cr)組成領域において、ホウ素添加により析出物が安定化されることを明らかにした。さらに、M23C6と母相bccFeから構成される界面モデルを作成し、ホウ素添加による界面安定性の評価をおこなった。大規模計算になるため、本年度はテスト計算として、析出物には単純なFe23(C,B)6を導入し、CをBで置換することにより、界面エネルギーのホウ素濃度依存性を評価した。 本研究で得られた結果については、学術論文誌で発表し、さらに、計算材料学の国際会議等における招待講演発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、M23C6という析出物に対する大規模第一原理計算を系統的におこなうことで、耐熱鋼中への微量添加ホウ素の効果の起源を理論的に明らかにしている。これまでに、(Fe,Cr)23(C,B)6という最大4元系の析出物について、生成エネルギーの等高線図を求めることで、ホウ素添加により析出物が安定化されることを明らかにした。さらに、M23C6と母相bccFeから構成される界面モデルを作成し、ホウ素添加による界面安定性の評価をおこなった。これらの結果は、実験結果を支持しており、今後の研究方針を与える事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
析出物M23C6の相安定性評価について、より高精度な系統的解析をおこなうことを検討している。さらに、耐熱鋼を扱っているため、第一原理計算の結果を基に温度の効果を取り込む研究の遂行を検討している。M23C6は実験的には多元系であることが期待されているため、第一原理計算では組成依存性を検討するだけでも組み合わせ爆発がおこることが考えられる。その場合、インフォマティックスの考え方を取り込むなどして、効率的な計算をおこなうことを検討する予定である。
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Research Products
(9 results)