2016 Fiscal Year Annual Research Report
電子論に基づく構造材料の巨視的特性の階層的機構解明
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15H04117
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐原 亮二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (30323075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 浩一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 拠点長 (50236907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 構造材料 / 界面強化機構 / モンテカルロ法 / 繰り込み / マルチスケール / 合金元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高信頼性構造材料設計の指針を理論的に得るために、その基本となる鉄系、チタン系、ニッケル系、マグネシウム系に的を絞り、マクロな材料特性を、合金元素特性解析、界面強化機構など、各スケールに現れる素過程をもとに、電子論に基づいたマルチスケールシミュレーションにより階層的に定量解明することである。 本年度は、チタン系合金については、bcc相、hcp相の安定性に及ぼす合金元素の効果を、第一原理計算で系統的に解析した。その際、合金の不規則原子配置を模擬するSQSモデルを導入し、従来型規則構造モデルを超えた精度での解析をおこなった。生成エネルギーの添加元素種と濃度依存性を求め、弾性特性を理論的に評価した。 さらに、高温で使用する際に問題となる表面酸化について、その機構を明らかにするため大規模第一原理分子動力学計算の実行に着手した。今年度は特に、酸化に及ぼす元素機能解明の一環として、シリコンの効果を扱った。 マグネシウム系合金については、強加工変形により高密度で導入された界面への合金元素(Zn Y)の効果を理論的に明らかにするため、双晶モデルと小傾角粒界モデルを構築し、合金元素偏析による界面安定化機構を明らかにした。 ニッケル系合金については、相安定性の温度依存性を高精度で定量評価するため、第一原理計算結果の繰りこみ操作による粗視化(スケール変換)の手続きを経て、離散モデルまでをシームレスに繋ぐ大規模マルチスケールシミュレーションモデルを導入し、その妥当性を検討した。モンテカルロ法のプログラムの並列化による高速化を図った。 得られた結果は、学術誌において発表をおこなった。さらに、材料に関する国際会議における招待講演発表などをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、以下に示すように、チタン合金、マグネシウム合金、ニッケル合金について各々、研究の進展があった。 チタン系合金については、bcc相、hcp相の安定性に及ぼす合金元素の効果を、第一原理計算で系統的に解析した。その際、合金の不規則原子配置を模擬するSQSモデルを導入し、従来型規則構造モデルを超えた精度での解析をおこなった。生成エネルギーの添加元素種と濃度依存性を求め、弾性特性を理論的に評価することに成功した。 さらに耐熱合金として使用する際に問題となる表面酸化について、その機構を明らかにするため大規模第一原理分子動力学計算に着手した。表面酸化に及ぼす元素機能解明の一環として、シリコン添加の効果を扱った。 マグネシウム系合金については、強加工変形により高密度で導入された界面への合金元素(Zn Y)の効果を理論的に明らかにするため、双晶モデルと小傾角粒界モデルを構築し、合金元素偏析による界面安定化機構を明らかにした。 ニッケル系合金については、相安定性の温度依存性を高精度で定量評価するため、第一原理計算結果の繰りこみ操作による粗視化(スケール変換)の手続きを経て、離散モデルまでをシームレスに繋ぐ大規模マルチスケールシミュレーションモデルを導入し、その妥当性を検討した。 なお、交付申請時にはポスドクを雇用することを検討していたが、今年度は技術業務員を雇用することした。それに伴い人件費を物品費に移動することで、第一原理計算ソフトウェアの購入をおこなった。研究の進捗には問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、これまでの研究の成果と経験をもとにして、さらに研究を進める予定である。 マグネシウム系合金については、合金元素としてZn、Yの他の元素種の効果を系統的に明らかにする予定である。その際、既に構築してある双晶モデル、小傾角粒界モデルを利用することが可能であるため、研究の時間短縮が図れる。チタン系合金については、大規模第一原理分子動力学計算の遂行により、表面酸化機構解明をより高精度で明らかにする予定である。ニッケル系合金については、有限温度における相安定性の評価を定量的におこなうため、第一原理計算結果の繰り込みによる格子モデルへのマッピングの手続きをさらに進める予定である。 得られた計算結果については、実験との綿密な比較検討をおこない、モデルの妥当性を検証し、問題があれば適宜モデルの修正をおこないながら、研究を進めて行く予定である。最終的に得られた結果については、学術誌において発表をおこなう。さらに、材料や計算材料学に関する国際会議における招待講演発表などをおこなう予定である。
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Research Products
(10 results)