2016 Fiscal Year Annual Research Report
磁場印加PLD法による半導体/絶縁体超格子薄膜の自発的生成と巨大熱電特性
Project/Area Number |
15H04123
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
脇谷 尚樹 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (40251623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 久男 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70154573)
坂元 尚紀 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (80451996)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピノーダル分解 / 自発的超格子生成 / エピタキシャル成長 / 酸化物薄膜 / 熱電 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画ではチタン酸ストロンチウムにランタンまたはニオブをドープした半導体のチタン酸ストロンチウム薄膜について自発的な超格子生成を目指していたが、自発的な超格子の生成に必要なAサイト過剰組成のチタン酸ストロンチウムにニオブやランタンをドープしても電気伝導度があまり大きくならなかった。そこで、当初の系に加えて電気伝導度が高いコバルト酸ランタンストロンチウム薄膜についても実験を行い、自発的に超格子構造が生成する薄膜組成と成膜条件を検討した。成膜時に印加する磁場の強さを1600Gに固定した際に、Sr量と(La+Sr)/Co比を系統的に変化させたところ、自発的に超格子構造が生成する範囲はSr量が概ね12-20%、(LA+Sr)/Co比が1.1-1.3の極めて狭い領域に限られることが明らかになった。既往の研究から、人工超格子薄膜における熱電特性は超格子の周期が小さく、2次元電子ガス状態に近づくほど高くなる報告がある。このため、本研究では自発的に生成する超格子構造の周期を小さくする方法を検討した。磁場中のPLD法で自発的超格子構造が生成する原因はイオンが基板に衝突することによるion pingement効果にあると私どもは考えている。このため、成膜時に印加する磁場の強度を弱めるとスピノーダル分解における組成波の伝搬距離が小さくなるために自発的に生成する超格子の周期は小さくなるだろうと考えた。実際、磁場の印加強度が2000Gの場合には周期は28nm程度と大きかったが、800Gでは約6nmまで低下した。なお、印加磁場をさらに小さくすると自発的な超格子構造の生成は認められなくなった。これは、自発的な超格子構造の生成に必要な磁場強度には閾値があることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年7月に、自発的に生成する超格子薄膜の作製に使っていたエキシマレーザーに不測の故障が生じたが、業者から故障箇所の特定は困難であると言われたため、当初計画になかったNd:YAGレーザーを用いて薄膜の作製を行う必要性が生じた。このため、成膜条件が大きく変わってしまい、Nd:YAGレーザーを用いて自発的に超格子構造が生成する薄膜の生成条件を確立するのに3ヶ月を要したが、その後の研究は大きなトラブルもなく、順調に進行している。なお当初計画のNbまたはLaドープのチタン酸ストロンチウム薄膜では電気伝導度が小さく、それゆえ熱電特性が小さくなることが予想されたため、電気伝導度が高いコバルト酸ランタンストロンチウム系でも実験を行い、同様に自発的に超格子構造が生成することが明らかになった。また、自発的に超格子構造が生成する組成範囲と、成膜時に印加する磁場の範囲のいわば"状態図"も得られつつある。このため、概ね良好に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、自発的に生成する超格子薄膜の熱電特性におよぼす超格子周期の関係を明らかにするとともに、熱電特性の温度依存性を解明する。合わせて、自発的に超格子構造が生成した薄膜の断面TEM観察と組成の膜厚依存性を調べることにより、自発的な超格子生成のメカニズムに解明を行っていく予定である。さらには、このような成膜中の磁場印加に誘起されるスピノーダル分解に関する材料科学の構築を目指す。
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Research Products
(9 results)