2016 Fiscal Year Annual Research Report
脱フッ素による高結晶垂直配向カーボンナノチューブの表面制御改質とその電気化学特性
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15H04131
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 義倫 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (30374995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田路 和幸 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (10175474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 垂直配向カーボンナノチューブ / 高結晶 / 脱フッ素 / 表面制御改質 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フッ素化された垂直配向カーボンナノチューブ(vertical aligned multi-walled carbon nanotube: VAMWCNT)を脱フッ素化することによって調製された骨格窒素置換型VAMWCNT(N-VAMWCNT)の電気二重層キャパシタ(electric double-layer capacitor: EDLC)の特性を調べた。まずN-VAMWCNTを5×5 mmのサイズに切り出したものをコレクタ電極(Al)に導電性接着剤なしで直接固定した。EDLCは3極型セルを使用し、上記の電極を作用電極にした。このセルを有機系電解質のテトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム/炭酸プロピレンを浸み込ませ、水分が入らないようにシールした。上記の工程はすべてN2雰囲気のドライボックス中で行った。各電極のEDLC特性はサイクリックボルタモメトリー(cyclic voltammetry: CV)により、様々な走査電位速度に対して測定し、静電容量、エネルギー密度、出力密度を調べた。 走査速度100 mV/sにおける比静電容量は、N-VAMWCNT(12.0 F/g)が未処理VAMWCNT(6.5 F/g)と比較して約1.8倍の値を示すものの、走査速度の上昇に伴い、N-VAMWCNTは最も著しく1.8 F/gまで減少した。これは、化学修飾したことで骨格炭素が乱れて、抵抗が増大したことにより高速掃引時におけるオーム損が大きくなったためと考えられる。抵抗の増大は未処理VAMWCNT とN-VAMWCNTのナイキストプロットからも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格窒素置換型VAMWCNTを電極としたEDLCの比静電容量が未処理のVAMWCNTと比較して大きかったことは本研究の大きな成果の1つであり、本研究を推進するにあたり重要な指針となった。 一方で、本年度はVAMWCNTへのマイナス極性の化学修飾も行なった。大気フロー中でフッ素化VAMWCNTを所定の温度(300~500℃)、所定の時間(30 min)熱処理することで、マイナス極性である酸素含有基官能基(カルボキシル基)を修飾することを試みたが、この方法ではフッ素基と酸素分子の反応性が高く、酸素含有基官能基はナノチューブに修飾されず、ナノチューブの炭素とフッ素、酸素が反応して、フッ化カルボニル(COF2)として脱離し、チューブ骨格が壊れることがわかった。VAMWCNTへのマイナス分極の化学修飾は成功していないが、本年度に行ったフッ素化ナノチューブと酸素の反応でフッ化カルボニルが生じたことは、今後の脱フッ素化による反応設計に役立つ知見として意義のある結果であると捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はVAMWCNTを大気プラズマ処理することで、CNT表面に酸素含有基官能基を修飾する。得られた「酸素含有官能基修飾VAMWCNT」を作用電極として3極によるEDLC特性を調べる。その後、片方の電極を「酸素含有官能基修飾VACNT」、もう片方の電極を「窒素置換型VAMWCNT」とした2極によるEDLC特性を調べる。 EDLCセルは以下のように組み立てる。まず化学修飾VAMWCNTを5×5 mmのサイズに切り出したものをコレクタ電極(Al)に直接固定する。3極型の場合は上記の電極を作用電極にする。一方、2極型の場合は、同様な方法で固定した電極を2つ用意し、電極間を絶縁性セパレーターで挟み、一定の荷重がかかるように電極間を固定する。このセルを有機系電解質のテトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム/炭酸プロピレンを浸み込ませ、水分が入らないようにシールする。上記の工程はすべてN2雰囲気のドライボックス中で行う。 各電極のEDLC特性は3極のサイクリックボルタモメトリー(cyclic voltammetry: CV)により、様々な走査電位速度に対して静電容量、エネルギー密度、出力密度を調べる。さらに周波数応答型インピーダンスから得られるCole-Coleプロットから、セルの等価直列抵抗、電荷移動抵抗、拡散抵抗を見積もる。3極による化学修飾VAMWCNT電極のEDLC特性を調べた後に、2極による化学修飾VAMWCNTを組み合わせたEDLC特性(それぞれの電極には異なる化学修飾VAMWCNTを設置)を行う。まず異なる化学修飾VAMWCNT電極による開放電圧の差異を計測し、様々な走査電位速度に対する静電容量、エネルギー密度、出力密度、充放電サイクル特性、セルの寿命特性を調べる。
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Remarks |
東北大学 大学環境科学研究科 佐藤義倫 研究室
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Research Products
(18 results)