2016 Fiscal Year Annual Research Report
Al合金のフラックスフリーロウ付に対する雰囲気酸素分圧と添加元素の影響
Project/Area Number |
15H04136
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80404937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フラックスフリーろう付 / 雰囲気酸素分圧 / 表面張力 / アルミニウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車の熱交換器は,熱伝導性と軽量化の観点から,現在はアルミニウム合金をろう付して製造されている.しかし従来のフッ化物系フラックスを用いた方法では,その残渣が近年の電気自動車やハイブリッド自動車などで多く使用される電子部品を故障させてしまう問題がある.そこで本研究では,アルミニウム合金のフラックスフリーろう付の開発を最終目的として,それに対する雰囲気酸素分圧および添加元素の影響について検討している. 平成27年度の研究では,試料の酸化抑制のために,ジルコニア式酸素ポンプを用いて,雰囲気酸素分圧を1E-30[atm]の非常に低い値まで低減し,それがアルミニウム合金のフラックスフリーろう付に及ぼす影響について検討した.その結果,従来のフラックスろう付には及ばないものの,間隙充填試験においては,フラックスを用いずとも,比較的長いフィレットが形成される事を明らかにした.平成28年度は,さらにろう付性を向上させることを目的として,還元性が高く表面張力の低いMgなどの複数の元素を,母材およびろう材に添加し,それらの効果について検討した. その結果,試料にマグネシウムを添加すると,酸素分圧が1E-7[atm]においても,フラックスフリーろう付が可能である事を明らかにした.またその添加の効果は,Al-Siろう材よりも母材において顕著になることを明らかにした.さらに,ジルコニア式酸素ポンプによって雰囲気酸素分圧を1E-30atmまで低減することと組み合わせた場合は,ろう付性が著しく向上することが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付のためには,試料の酸化抑制,再酸化の防止,生成した酸化皮膜の破壊の全てを考慮する必要がある.さらに,酸化皮膜の問題とは別に,ろうの進展を促進するためには,溶融ろうの表面張力を低下させることが効果的であると考える.本年度は,単にMgがろう付性の向上に効果的であることだけでなく,その添加効果が,母材とろう材とで異なる事を明らかにした.このように,単にろう付性向上に効果的な元素を見つけること以上の結果を得ている.また,この成果を雰囲気酸素分圧の低減と組み合わせることで,予想を超えるろう付性を得ていることから,おおむね順調とした.
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付の為には,酸化被膜の生成抑制が必須である.本年度までは,雰囲気酸素分圧の低減と,添加物によってそれを試みてきたが,酸化皮膜の生成・抑制は,加熱時間の長短などの加熱プロファイルとも関連する.また,酸化抑制のために,加熱時間を短くしすぎた場合は,溶融ろうの進展に必要な時間が不十分となる可能性もある.そこで,アルミニウム合金を間隙充填法によってフラックスフリーろう付する際の,加熱時間と充填長さの関係を明らかにし,加熱プロファイルの影響について検討する.
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