2016 Fiscal Year Annual Research Report
環境浄化および生体適合性に優れた二酸化チタンの研究
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15H04138
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
正橋 直哉 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20312639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 優 東北大学, 大学病院, 助教 (70634541)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 陽極酸化 / インプラント / チタン合金 / 骨伝導性 / 生体適合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に得た、酢酸電解浴で成膜した陽極酸化膜を担持したTiNbSn合金における優れた骨伝導性の発現メカニズムは、これまで報告されてきた温水処理による水酸基吸着や、TiO2とハイドロキシアパタイト(HAp)の結晶学的整合性にあるのではないことを証明すると共に、結晶性の高いTiO2の成長が関与するとの新たな提案を行った(Thin Solid Filmsに投稿中)。この提案を受けて、結晶性に優れたTiO2の成膜が可能な硫酸電解浴によるTiNbSn合金への担持を行い、in vitro実験から温水処理を施さなくてもHApが生成すること、そして当該試料を埋め込んだin vivo実験から、酢酸電解浴で成膜したTiNbSnの引抜強度よりも高い引抜強度を確認した。このことから、TiO2の結晶性が引抜強度(骨伝導性)に関与することが実証され、その直接的根拠となる、骨とインプラント材の界面近傍のFIBサンプリングによる組成分析を実施することで骨成分のCaとPのTiO2中への浸透の実証を調査中である。一方、硫酸電解浴で成膜したTiO2の光誘起機能は酢酸電解浴で成膜したTiO2の光誘起機能より優れことが明らかとなり、インプラント材で通常行われる110~130℃のオートクレーブ殺菌に替わる光触媒殺菌が期待できる。当該温度での殺菌処理はTiNbSnの低いヤング率を増加させることが明らかになり、逆変態の関与が懸念されることから、高い光誘起機能は昇温滅菌処理を行わないこととなり、次年度の検証課題となる。そして、これらの電解浴での高圧印加下での電気化学反応を調べる目的で、アノード分極実験を行った結果、酢酸水溶液に比べ硫酸水溶液中での成膜反応の促進と、絶縁体生成による酸化膜の溶解を確認した。これらの基礎知見を基に、成膜反応の理解と結晶性の高いTiO2創製に有効な電気化学条件を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由の一点目は、本申請課題にある生体適合性の検証には、研究分担者である医学部との共同研究による動物実験が、説得力のある研究成果創出に寄与し、整形外科の学術の立場からの考察が研究の奥行きと深みを高めていることが挙げられる。二点目は、本研究の目的達成に必須な電気化学的検討による骨伝導性に優れた成膜反応において、実験セットアップを前年度に完了させてことで、これまで報告の無かった200V以上の高い化成電圧下でのアノード分極曲線を調べることが可能となり、基礎的理解を深めることが可能になったことである。そして三点目は、文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」や、共同利用設備を活用することで、これまで明らかにするのに苦労を要した分析知見を効率よく解明できるようになったことである。申請者と分担者の協力に加え、組織の有する支援事業を駆使することで、当初の計画以上の成果を得ることが出来ていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の属するグループの開発したTiNbSn合金は、生体に安全な元素から構成され、低ヤング率と高強度を備えるだけでなく、大腿骨ステムのような複雑形状に冷間で成型加工が可能な新合金である。昨年、40名の患者への治験を宮城県内5つの病院で行い、経過観察に途上にあり、結果が整った段階で薬事審査を行う予定である。本申請課題は、開発したTiNbSn合金に陽極酸化処理を施すことで、TiNbSn合金の生体適合性を高めることを目標とするが、これまでのところ未処理材に比べて、高い引抜強度と優れた光誘起性能を実証している。しかし新生骨の形成促進機構の解明、最適な成膜条件の決定、光誘起機能による滅菌性確認など、行うべき課題は山積し次年度以降の課題である。材料科学と医学の基礎的知見の融合による安全で安心な治療提供を目指すと共に、その学術理解を深める予定である。
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Research Products
(6 results)