2016 Fiscal Year Annual Research Report
水素透過金属膜における新パラダイムの構築と低温作動型合金膜の最適設計への展開
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15H04144
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
湯川 宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50293676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (10270274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素透過金属膜 / 構造・機能材料 / 合金設計 / 水素化物形成温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属膜の水素透過能はこれまで、フィックの法則を出発点とする水素透過係数φに基づいて整理されてきた。しかし、この解析法は水素濃度が非常に希薄な領域でしか理論的には成立せず、水素透過能を正しく解析できない事例が多く指摘されている。 本研究では、金属膜の水素透過能を『水素の化学ポテンシャルに基づく水素透過能の新しい表現』に基づいて解析し、水素溶解特性と水素拡散の易動度の各パラメータに及ぼす諸因子の影響を定量的に整理する。これにより、従来の理解とは異なる切り口から、水素 透過金属膜の新しい学術体系を構築するとともに、これらの知見を低温作動型合金膜の設計へ展開する。パラジウム系合金膜で見いだされた低温域での水素透過能の特異な温度依存性を新しい視点から理解するとともに、200℃以下の低温で高い水素透過能と優れた耐 水素脆性を発揮する低温作動型新規バナジウム系合金膜の最適設計を行うことを目的とする。 本年度の研究実績の概要は以下の通りである。1.昨年に引き続き、種々のV-X2元系合金につい300~500℃でのPCT測定を系統的に行い、水素溶解エンタルピー変化およびエントロピー変化に及ぼす合金効果を明らかにした。2.上記の合金について、300~400℃での水素透過試験を系統的に行い、水素拡散の易動度を求めた。易動度のアレニウスプロットより、振動数項と活性化エネルギーに及ぼす合金効果を明らかにした。3.低温作動型合金を設計する上で重要となる、バナジウム水素化物(β相)の形成温度に及ぼすFeおよびAlの添加効果を明らかにした。Feは水素化物形成温度を上昇させた。一方、Alは形成温度を著しく減少させ、約3.5%の添加により室温でもβ相の形成が抑制できることを明らかにした。4.第1原理計算により、合金元素近傍の水素占有サイトの安定性にに及ぼす合金効果を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水素溶解に伴う部分エンタルピー変化および部分エントロピー変化に及ぼす合金効果をデータベース化した。これにより、任意の運転温度・任意の水素分圧のガスにおいて、高い水素透過能と優れた耐水素脆性を発揮する合金組成を合理的に設計できるようになった。 また、水素の拡散性に及ぼす合金効果をデータベース化することで、上記の合金膜および運転条件での水素透過流束を見積ることが可能になった。 さらに、水素中その場XRD測定および第1原理計算により、水素化物の形成を抑制する合金元素の候補を幾つかリストアップした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、1.水素溶解特性および水素拡散の易動度に対する合金効果を系統的に調査する。2.水素の占有サイトに注目して全エネルギー計算を行う。さらに、エネルギー密度解析(EDA)により、金属-水素原子間の相互作用に及ぼす合金効果を、各原子のエネルギー密度の観点から考察する。3. CsCl構造のB2型金属間化合物(TiFe, TiNi, PdCu等)について、PCT測定および水素透過試験より、水素化特性と水素の拡散性を定量的に評価する。
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Research Products
(18 results)