2016 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電体ドメインウォールにおけるチャージ効果の解明と界面機能開拓
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15H04145
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 篤智 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20419675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栃木 栄太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50709483)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強誘電体 / ドメインウォール / 極性界面 / 電気伝導特性 / 双結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】強誘電体ドメインウォールにおいて,電気伝導性や磁性など新奇な物性が発現することが報告され,注目を集めている.これらの特性はドメインウォールにおける局所的な電荷の偏りが起源と考えられる.本研究では,結晶方位と分極の制御を施した強誘電体単結晶の基板2枚を接合により一体化させて得られる「双結晶」の接合界面を利用して,強誘電体ドメインウォールの機能物性発現メカニズムを調査している.さらに,双結晶界面において構造とチャージの両方の制御を利用した新奇な界面機能の開拓も行っている. 【伝導キャリアの調査】 構造的にマイナスのTail-to-tailドメインウォールにおいて,ゼーベック効果の測定を行ったところ,電子がキャリアとなっているという結果が得られた.この結果は従来とは逆である.また,還元処理を施すことで初めて電気伝導が発現することからも電気伝導が電子により生じていることを示唆している.還元処理により構造的にマイナスの極性界面に,優先的に構造的にプラスの酸素欠損型点欠陥が生じたために,Tail-to-tailドメインウォールのキャリアが電子となったと考えられる. 【外部場による電気伝導率変化】 強誘電体の有する圧電特性によりTail-to-tailドメインウォールの電気伝導率が変化することが確認された.具体的には圧縮荷重の増大に伴い,Tail-to-tailドメインウォールに沿った電気伝導性が線形的に向上するという結果が得られている.この結果は極性界面伝導をスイッチとして機能させることが可能であることを意味している.さらに,この結果は,伝導キャリアがマイナスであることも証明している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【構造チャージを有するTail-to-tailドメインウォールの電気伝導キャリア特定】 従来,Tail-to-tailドメインウォールはマイナスの構造チャージを有するため,ホールにより電気伝導が生じると考えられている.一方,本研究では温度勾配を与えたゼーベック効果測定を行った.その結果,Tail-to-tailドメインウォールにおける伝導キャリアはマイナスであると推定された.実際,還元処理のない状態では電気伝導は生じず,還元処理により電気伝導が発現することから,電気伝導のキャリアは電子であると推測されており,それと合致する結果となった. 【外部場による電気伝導率変化の測定】 強誘電体は圧電特性を有しているため,外部圧力により材料表面に電位が生じる.そこで,Tail-to-tailドメインウォールに対して,分極軸に垂直に圧縮荷重を負荷したところ,ドメインウォールに沿った電気伝導率の向上が認められた.本現象は,荷重に伴ってマイナスの構造チャージが減少したことで,界面に引きつけられるマイナスキャリアの量が増えたためと考えることで説明できる.この結果は,極性界面における電気伝導特性が外部荷重によりコントロール可能であることを初めて示した点で有意義である.さらに,伝導キャリアがマイナスであることをこの結果からも証明することができているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
【構造的にプラスにチャージしたHead-to-headドメインウォールの伝導特性評価】 昨年度,Tail-to-tailドメインウォールの伝導が電子で生じていることが確認できた.今年度は逆にプラスにチャージしたHead-to-headドメインウォールの電気伝導メカニズムについて詳細に調査を行っていく.Head-to-headドメインウォールも還元により電気伝導が発現することがこれまでにすでに明らかになっている.Head-to-headドメインウォールも外部荷重により電気伝導性が変化するか否かについて調査する.こちらのドメインウォールは本来マイナスのキャリアが生じると言われる構造である.これまで,単なる電子伝導だけでは説明が付かない電気伝導特性なども見られており,それらについて詳細に調査する. 【極性界面電気伝導に及ぼす結晶転位の影響の評価】 本研究において双結晶作製時に結晶方位差を与えることで,ドメインウォール上に周期的な転位を導入できる.転位は,それ自身がドーパント偏析等により導電性や磁性などの機能を発現させることができる.そこで,ドメインウォール上の転位を利用することで,転位由来の機能特性とチャージ制御を組み合わせることができる.その結果,特異な界面物性の発現が期待できる.なお,転位を伴う局所的な導電性・磁性等についても,本研究にて導入したAFMにより測定可能と考えている.
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Research Products
(14 results)