2016 Fiscal Year Annual Research Report
生体内で自発的にポーラス化する革新的な複相化溶解性化合物インプラントの創成
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15H04146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩原 幸司 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10346182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 溶解性金属材料 / 金属間化合物 / インプラント / 生体材料 / 複相材料 / 溶解性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,特にCa3MgxZn15-x(IM1)とCa2Mg5Zn13(IM3)の複相合金に着目し,組織制御による溶解挙動制御の可能性について検討した.具体的に,腐食挙動を支配すると考えられるガルバニック電流に着目し,構成相腐食電位,体積率比の制御,といった観点から考察を行った.構成相腐食電位としては,IM1相がその化学組成に示されるようにZn/Mg比が単相領域中にて幅広く可変であることを踏まえ,異なる組成を有する単相結晶を育成し,対電極をIM3とし,ガルバニック電流の変化を直接評価した.この結果予測通り,Zn/Mg比を増大させることで,2相間に生じるガルバニック電流が低減することを確認した.さらにこれを踏まえ,実際に異なる組成のIM1相をほぼ同体積率含有するIM1/IM3複相合金を作製することで,実際に腐食速度が上述のようにIM1相組成にて制御できることを動電位分極測定により定量的に同定した. さらにこのガルバニック電流の絶対値が理論的に両相の表面積比により変化し,相対的に卑なIM1相の体積率が低減するにつれ,その値が増加する可能性があることに着目した.まずIM1,IM3両単相結晶を用いた基礎実験により,本理論式が強い溶解性を示すIM1/IM3間にも適応可能であることを確認した.ただし一方で,体積率の増大は系全体としての電流量(面積x電流密度)を増大させる可能性がある.そこで実際に同一のIM1組成を有するものの,その体積率が異なる複相結晶を実際に溶製することで,その溶解挙動を動電位分極測定により評価した.この結果,合金の溶解挙動は,単純に合金組成のみによって支配されるわけでなく,構成相の組成,体積率に依存して変化することが見出された.このように本年度検討を通じ,IM1/IM3複相合金の溶解挙動を支配する組織学的因子について,定量的に同定することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究により,理想とする化合物複相材の組み合わせとしてIM3/IM1相の組み合わせを見出すと共に,さらにその溶解挙動を支配する組織学的因子として,構成相組成(腐食電位),構成相体積率比の影響をより定量的に見出すことに本年度成功した.この結果,本提案にて掲げた新材料創成のための目途を既に立てることに成功した.この成果を踏まえ最終年度は,更にその特性向上策を確立するとともに,更に別相の導入による,より多機能・高機能を有した新材料創成を試みる.
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,昨年度までに開発に成功したIM3/IM1複相合金に特に着目し,さらにその特性向上させるための方策として,組織微細化の可能性について検討する.加えさらに,ハイドロキシアパタイトといったバイオセラミックスとの更なる複相化,といった新たな試みにもチャレンジする.また,これまで単相結晶を用い,基礎的知見を積み上げてきた結晶方位制御による溶解挙動制御,という独自観点を更にこの複相材料の高機能化に適応する方策についても検討する.
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