2015 Fiscal Year Annual Research Report
高圧アロトロピー組織制御による水素分離膜の創製と低温作動シナジー合金膜への応用
Project/Area Number |
15H04148
|
Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40219522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 准教授 (10270274)
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 水素 / 構造・機能材料 / 材料加工・処理 / 燃料電池 / 金属物性 / 水素透過 / スモールパンチ / 巨大ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では高圧アロトロピー組織制御によって結晶粒を超微細化した5族金属やそれらの合金についての水素透過性能を調べ,水素環境in-situ小型パンチ(SP)試験とSPクリープ試験による耐久性評価を行うとともに,これら水素透過材料の透過性能向上の発現機構を解明することを目指している。平成27年度は,バナジウム(V)の高圧アロトロピー組織制御(強ひずみ加工)後の組織変化,硬さ測定や引張試験による機械的性質の把握と,SPクリープ(SPC)試験装置に各種環境制御機能を付加することを主目標に置いて研究を展開した。得られた結果や知見を以下に要約する。 (1)Vの強ひずみ加工の検討については,圧力5GPa,回転数n=1~5で高圧ねじり(HPT)加工を連携研究者の協力のもとで行い,微細結晶粒組織の観察ならびに現有のFE-SEM/EBSDによる高分解能結晶方位解析を実施した。そして超微細化された結晶粒が500℃以下の温度では粗大化せずに維持される一方で,700℃では粗大化し硬さや引張強さが低下することを明らかにした。 (2)HPT加工による高密度の転位は,400℃以下の温度では靱性の低下を招いていたが,500℃では回復による明瞭な機械的性質の変化が見られた。 (3)スモールパンチクリープ(SPC)試験装置への各種環境制御機能付加の検討では,アルゴン(Ar)ガスフローシステムを有する従来型の試験部をin-situ SP試験治具にてリプレースし,これに真空排気システムや負荷水素圧力/流量コントローラを付加して,耐久性評価システムの構築を行った。さらに強ひずみ加工を施したVの水素化特性の定量評価を行うためのPCT測定装置を導入して,試験条件設定のための基盤整備を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の当初計画では,バナジウム(V)の高圧アロトロピー組織制御(強ひずみ加工)後の組織変化,硬さ測定や引張試験による機械的性質の把握と,SPクリープ(SPC)試験装置に各種環境制御機能を付加することを主目標としており,以下の具体的達成目標を掲げていた。ここでは当該年度の進捗度を自己点検して達成度を評価した。各項目の達成度を括弧内に示す。 1.Vの強ひずみ加工の検討では,圧力5GPa,回転数n=1~5で高圧ねじり(HPT)加工を連携研究者の協力のもと実現,微細結晶粒組織の観察と現有FE-SEM/EBSDによる高分解能結晶方位解析の実施(100%) 2.強ひずみ加工後のVについての転位密度変化の評価,硬さ測定や引張試験による機械的性質の把握と,それに基づいた微細結晶粒径との相関図の作成(60%) 3.スモールパンチクリープ(SPC)試験装置への各種環境制御機能付加の検討と,強ひずみ加工を施したVの水素化特性の定量評価とその温度依存性,合金元素添加効果の調査(80%)
尚,平成27年度においては同時並行的に一部次年度(平成28年度)計画分も前倒し実施をしており,総合的には事業期間全体(3年間)の1/3を経過した段階で,研究実施計画(全体)に対して,その進捗率が総合的に35%程度であると考えているため,上記の進捗状況(達成度)の区分とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はいずれも研究代表者が主体的に行うこととしているが,平成28年度以降についても引き続き,研究分担者の名古屋大学湯川助教および鈴鹿高専南部准教授の協力を得て共同で実施することとしており,各研究機関の特徴や問題解決にむけた得意分野をそれぞれの研究者が発揮することでこの研究をさらに進めて行きたいと思っている。また研究代表者は研究分担者,共同研究者らと常に相互訪問による情報交換を行っており,本研究に関しても連絡調整は十分に行えている状況であるので,これを有機的に活用したい。連携研究者の九州大学堀田教授は巨大ひずみ加工を各種金属材料に施してその特異な現象を発見していることに加えて,学術的裏付けをも検討するこの分野の第一人者である。当該課題においても引き続き超微細粒組織制御に関する多方面からの協力を頂くことの了解を得ている。 さらに研究内容については,最近,Vなどの5族金属の表面にPdやPd-Agなどの水素解離触媒性を有する被膜をスパッタ法などで成膜し,これを450℃以上の高温下に曝すと,下地金属とこの被膜の界面に金属間化合物相を形成し,水素透過時間の経過に伴ってfluxが減少することが問題となっているが,本課題では当該プロセスの適用により表面活性の変化が期待されることから,この機能発現の可能性を探るなど,耐久性評価に向けた検討に加えて,新しい知見や研究情報を得るための枝葉の研究も行いつつ,本研究課題を発展させたいと考えている。
|
Research Products
(19 results)