2016 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of metallurgical factors for controlling friction coefficient through nanocrystallization in metals
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15H04155
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50345956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トライボロジー / 構造・機能材料 / 組織制御 / 格子欠陥 / 巨大ひずみ加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ組織化による摩擦係数μ制御(低μ化, 高μ化)は、高密度に格子欠陥(結晶粒界, 転位 等)を導入することにより、結合フリーな原子(電子の偏り)が試料表面で増加することに起因して可能となると考えられる。この点に着目して、格子欠陥種・密度の異なる鉄鋼材料について調査し、μ制御のための組織因子を明らかにすることで、金属の組織制御に基づいた新たなμ制御の指導原理を提案することを目的とする。 平成28年度は、ナノ組織と潤滑油との相互作用(物理吸着, 化学吸着)・反応(化学反応)を活用したμ制御の可能性を検証するため、平成27年度に引き続いてナノ組織化した軸受鋼SUJ2, 純Feを供試材とし、加えて粒界偏析元素(C, P, S)を添加した純Feも用いて、以下の項目を調査した。 【a】 強い原子-分子間相互作用(物理吸着, 化学吸着)の活用による低μ化 物理吸着膜を形成する、極性のないポリ‐α‐オレフィン(PAO)系潤滑油と比較して、極性のあるエステル系潤滑油において、ナノ組織化(結晶粒微細化(粒界の高密度化), 転位の高密度化)により低μ化が顕在化することが分かった。これは、走査型プローブ顕微鏡法, X線小角散乱法 等の調査から、ナノ組織化により物理吸着膜の厚さや結合の程度が増加することに起因することが明らかとなった。粒界偏析元素(C, P, S)の添加による顕著な摩擦係数の変化は認められていない。また、化学吸着膜を形成するオレイルアミン配合PAO系潤滑油においても、ナノ組織化により低μ化が顕在化することが分かった。 【b】 高い反応性(化学反応)の活用による高μ化 化学反応膜を形成する極圧添加剤(リン酸トリクレジル, TCP)を配合したPAO系潤滑油において、リン酸Fe膜が形成し、ナノ組織化によりその形成形態が変化することで高μ化が顕在化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表層ナノ組織化摩擦加工により作製した表層ナノ組織化軸受鋼SUJ2と、HPT加工により作製したバルクナノ組織化純Feおよび粒界偏析元素(C, P, S)を添加した純Feを用いて、摩擦係数μに及ぼすナノ組織の影響を調査した。また、HPT加工と熱処理により格子欠陥種・密度を制御した試料を供試材として、μに及ぼす格子欠陥の影響について系統だった調査を行なった。 「研究実績の概要」に記述の通り、ナノ組織化(結晶粒微細化(粒界の高密度化), 転位の高密度化)により、潤滑油との相互作用(物理吸着(PAO系, エステル系潤滑油), 化学吸着(オレイルアミン配合PAO系潤滑油))・反応(化学反応(TCP配合PAO系潤滑油))を活用して、μ制御が可能であることを明らかにした。また、走査型プローブ顕微鏡法, X線小角散乱法, 電子顕微鏡法 等の調査から、ナノ組織化による膜の構造や形成メカニズムの変化を明らかにしつつあり、順調に進展していると言える。 平成29年度はそれらと共に、異なるナノ組織化手法(例えば物理的気相成長法(PVD))により作製した試料を用いて、ナノ組織と潤滑油との相互作用(物理吸着, 化学吸着)・反応(化学反応)を活用したμ制御の普遍化を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ組織化による摩擦係数μ制御は、高密度に格子欠陥を導入することにより、結合フリーな原子(電子の偏り)が試料表面で増加することに起因して可能となることが明らかとなりつつある。昨年度までは、表層ナノ組織化摩擦加工により作製した表層ナノ組織化軸受鋼SUJ2と、HPT(High-Pressure Torsion)加工により作製したバルクナノ組織化純Feおよび粒界偏析元素(C, P, S)を添加した純Feを、供試材とした。平成29年度はそれらと共に、異なるナノ組織化手法(例えば物理的気相成長法(physical vapor deposition, PVD))により作製した試料を用いて、ナノ組織と潤滑油との相互作用・反応を活用したμ制御の普遍化を目的に、以下の項目について調査する。 【a】 強い原子-分子間相互作用(物理吸着, 化学吸着)の活用による低μ化 ナノ組織化により金属表面原子と潤滑油分子との相互作用が強くなることが明らかとなりつつある。そのため、物理吸着膜を形成するポリ‐α‐オレフィン(PAO)系(極性なし), エステル系(極性あり)潤滑油や、化学吸着膜を形成するオレイルアミン配合PAO系潤滑油を用いて、低μ化に及ぼす格子欠陥種・密度, 添加元素の影響を調査する。低μ化に及ぼす潤滑油膜の構造や形成メカニズムを、走査型プローブ顕微鏡法, 小角散乱法, 赤外分光法 等を用いて調査する。 【b】 高い反応性(化学反応)の活用による高μ化 潤滑油中の極圧添加剤が金属表面に化学反応膜を形成することで、高μ化することが期待できる。化学反応膜を形成する極圧添加剤(リン酸トリクレジル, TCP)を配合したPAO系潤滑油を用いて、高μ化に及ぼす格子欠陥種・密度, 添加元素の影響を調査する。高μ化に及ぼす極圧添加剤の役割(化学反応膜の形成形態)を、電子顕微鏡法 等により調査する。
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Research Products
(9 results)