2016 Fiscal Year Annual Research Report
イオンエネルギー確率分布関数制御型プラズマによる窒化ホウ素薄膜の組成制御の研究
Project/Area Number |
15H04159
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江利口 浩二 京都大学, 工学研究科, 教授 (70419448)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 繁彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50189528)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 結晶・組成制御 / プラズマ / ナノ材料 / 材料加工・処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イオンエネルギー確率分布関数(IEDF)を制御することで、超高硬度・高ガスバリア特性・高耐酸化性膜として期待されている窒化ホウ素膜(BN)の組織・組成制御技術の確立を目指している。昨年度からの継続案件である、BN多層薄膜形成システム(反応性プラズマ支援成膜法、Reactive Plasma-Assisted Coating:RePAC)の新規立ち上げについては、本年度(H28)に完了し、Si基板上への成膜を確認した。また、原型機により作製したBN多層構造について様々な解析を進めた結果、以下の新しい知見を得た。 (1)誘導結合型プラズマ曝露(バイアス周波数400 kHz)を施したBN膜最表面を、ナノインデンテーション法により解析した結果、押し込み硬さおよびヤング率が実効深さ約200nmの領域で変化することがわかった。またそれらの変化量が、プラズマ曝露条件に依存することがわかった。 (2)BN積層構造における剥離防止法として、BN膜中のN量最適化が有効であることがわかった。 (3)RePACシステムによって形成したBN膜は、BN膜組成比を最適化することで、大気暴露および真空環境下において安定した(低)摩擦係数が実現されることがわかった。 (4)プラズマ曝露を想定した古典的分子動力学法によるシミュレーションを用いることで、イオン衝撃によるsp2結合からsp3結合への構造遷移およびsp3結合を有するクラスター構造形成を確認することができた。 今後、(1)についてはバイアス周波数13.56 MHzの場合の構造変化、また(2)(3)については、新規システムによるBN膜に対する解析を進める。また、研究協力者とともに引き続きそれらの成果を学会発表する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規のBN多層薄膜形成システムの立ち上げが、ようやく昨年度に完了した。そのため、新システムによるBN膜の構造解析が若干遅れている。ただし、それ以外は計画通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、(1)新チャンバーにより作製するBN膜の評価解析を進める。平行して、研究協力者から提供されたBN膜/Si基板のプラズマ曝露による構造変化を詳細に解析する。プラズマ曝露は、これまでと同様、誘導結合型プラズマシステムを用いるが、バイアス周波数を13.56 MHzに変更し、イオンエネルギー分布関数を変化させる。プラズマ曝露による機械特性・電気特性変動を詳細に解析する。 解析は主に、ナノインデンテーション法による押し込み硬さおよびヤング率、電気容量測定法による誘電率に着目して実施する。平行して、古典的分子動力学法によるシミュレーションを継続し、上記の実験事実を検証する。特にc-BN相とh-, r-BN相の相互遷移過程や、c-BN相のクラスタリング過程の、入射イオンエネルギーの効果を明らかにする。 [本課題での研究協力者] 神港精機株式会社 野間正男 プロセス設計協力(及びBNサンプル提供)
|
Research Products
(4 results)