2015 Fiscal Year Annual Research Report
アンモニアを「エネルギー貯蔵体」とする新システムにおける次世代アルカリ燃料電池
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15H04165
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田口 正美 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90143073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 嘉一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10302259)
加藤 純雄 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50233797)
高橋 弘樹 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60632809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 燃料電池 / アンモニア / エネルギー貯蔵体 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)反応性スパッタによる各種組成Pt酸化物薄膜の調製:反応性スパッタを用いてTi基板上にPt薄膜あるいはPt酸化物薄膜を析出させた.Arプラズマ中で析出されるPt薄膜は現行のアノード触媒に相当し,O2プラズマ中で調製されるPt酸化物薄膜は新規に開発する高活性なアノード触媒の出発材料となる.また,反応ガスの組成を変化させることで,Pt酸化物薄膜のO/Pt原子比を任意に調整できることから,アンモニア酸化活性に及ぼす組成の影響を調査した.(2)回転ディスク電極法によるアルカリ溶液中でのアンモニア酸化活性評価:Pt薄膜あるいはPt酸化物薄膜を析出させたTi基板を真鍮製ホルダーにはめ込み,絶縁キャップで覆って反応面積一定の回転ディスク電極とした.この回転ディスク電極を作用極として,アンモニアNH3を含有したアルカリ溶液中でアノード分極測定を実施し,その電流値からアンモニア酸化活性を評価した.また,これらの回転ディスク電極にカソード電流を印加した後にアノード分極を行うことで,Pt酸化物薄膜のアンモニア酸化活性に及ぼす電気化学還元の影響を調査した.(3)X線光電子分光法による電極触媒の化学結合状態の分析:Pt薄膜,Pt酸化物薄膜および電気化学還元処理を施したPt酸化物薄膜の化学結合エネルギーをX線光電子分光法XPSにより調査し,アンモニア酸化活性に及ぼす化学結合状態の影響を考察した.(4)高分解能TEMによる原子レベルの不整合性の調査:高分解TEMにより電気化学還元したPt酸化物薄膜の欠陥構造を調査し,卓越した触媒活性と原子レベルの不整合との関連を考察した.(5)Pt酸化物の最適還元条件および高活性発現機構の解明:前述の実験データを総括して,Pt酸化物のアンモニア酸化活性を最大化するO/Pt原子比およびそれを得るための電気化学処理の最適条件を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)反応性スパッタによる各種組成Pt酸化物薄膜の調製:反応ガスの組成を変化させることで,Pt酸化物薄膜のO/Pt原子比を任意に調整できることから,アンモニア酸化活性に及ぼすPt酸化物薄膜の組成の影響を明確にできた.(2)回転ディスク電極法によるアルカリ溶液中でのアンモニア酸化活性評価:Pt酸化物薄膜においては,電気化学還元処理を施すことによりメタノールやエタノールの酸化反応と同様に,アンモニアの酸化反応においても卓越した触媒活性が発現することが確認できた.(3)X線光電子分光法による電極触媒の化学結合状態の分析:X線光電子分光法XPSによりアンモニア酸化活性に及ぼす化学結合状態の影響を明らかにした.また,EPMAやICPによる化学組成の分析,COストリッピングボルタンメトリーによる触媒材料の活性表面積の算出し,電気化学還元したPt酸化物における卓越した高活性の発現メカニズムを考察した.(4)高分解能TEMによる原子レベルの不整合性の調査:電気化学還元前後のPt酸化物薄膜の欠陥構造を調査した.電気化学還元によってPt酸化物薄膜が直径5~10 nmの結晶子に分割され,活性表面積が急激に増大する現象を明らかにした.(5)Pt酸化物の最適還元条件および高活性発現機構の解明:Pt酸化物のアンモニア酸化活性を最大化する反応ガスの組成および電気化学処理の最適条件を決定した.また,XPSによる化学結合状態の分析および高分解TEMによる原子レベルの不整合の観察結果を総合し,アンモニア酸化反応に及ぼすPt酸化物触媒の原子欠陥の役割を考察した.そして,電気化学還元に伴うPt酸化物の触媒活性の急激な上昇のメカニズムを推定した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Pt Oxide Blackを出発材料とした微粉末電極触媒の製造:燃料電池用の電極触媒では,単位質量当たりの実効表面積を増大させるために微粉末化することが重要である.そこで,Pt Oxide Blackを触媒層とした回転ディスク電極に電気化学還元を施してアンモニア酸化活性を調査すると同時に,その比表面積をBET法等で計測する.これらのプロセスにより,高活性・高比表面積のアンモニア酸化触媒を製造する.また,電極触媒の大量生産を想定して,H2気流中で熱還元処理を行ったPt Oxide Blackに関しても,アンモニア酸化活性ならびに比表面積を調査する.(2)表面増強赤外分光によるアンモニア酸化反応のその場解析:この方法では,電気化学反応が起こっている電極と溶液の界面において,触媒表面の吸着種に関する情報をその場測定できる.フーリェ変換赤外分光光度計を使用して,Pt Oxide Blackを出発材料として新たに調製した電極触媒のアンモニア酸化反応における表面吸着種のその場測定を行い,卓越した触媒活性の原因となる素過程を解明する.(3)アニオン交換膜を用いた固体高分子型アンモニア燃料電池の作製:新規に開発したアンモニア酸化触媒をアノード触媒の用いたアルカリ形アンモニア燃料電池を製造し,発電特性を調査する.すなわち,Pt Oxide Blackを出発材料として作製したアノード触媒,カーボン粉末およびアニオン交換樹脂を混合し,OH-イオン導電体であるアニオン交換膜に塗布して,膜・電極接合体MEAを構成する.このMEAを燃料電池評価セルに装着し,計測される電流密度-起電力曲線および電流密度-出力密度曲線から放電特性を評価する.
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Research Products
(33 results)