2015 Fiscal Year Annual Research Report
リアルオプション分析を用いた船舶設計の意思決定の高度化に関する研究
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15H04208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稗方 和夫 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80396770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
満行 泰河 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40741335)
大和 裕幸 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50220421)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 船舶設計 / リアルオプション / 不確実性 / 計画・設計・生産システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、船舶の設計段階から市場変動に対応するために、リアルオプションを導入した船舶設計案を提案した。ライフサイクル期間内での改修として、エンジンディレーティングやプロペラの換装が容易となるような船舶設計案をあらかじめ設計段階でオプションとして保持し、オプションの保持と行使のための必要な費用を含めることで、市場変動に対応したオプションを持つ船舶設計案を考慮することが可能となる。 また、リアルオプションを導入した船舶設計案のライフサイクル全体での価値をNPVによって定量的に評価する手法を提案した。具体的には、海上物流市場予測モデル、船舶性能モデルと海上物流収支計算モデルから構成される運航シミュレータを開発し、市場変動に対応して改修オプションを行使するルールをその運航シミュレータに組み込むことでリアルオプションを導入した船舶設計案を評価することを可能とする。 ケーススタディとして、実際に航行するVLCCを想定して、市場の不確実性を考慮した場合に、リアルオプションを導入した船舶設計案がどの程度船舶の価値を向上させることができるかを、提案手法を用いて検証した。結果として、適切な改修オプションを保持できれば、リアルオプションを導入した船舶設計案はリアルオプションを導入しない通常の船舶設計案と比較して価値を向上させることが可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海上物流市場予測モデル、船舶性能モデル、海上物流収支計算モデルからなる運航シミュレータを開発し、そこに市場変動に対応して改修オプションを行使するルールを取り込むことでリアルオプションを導入した船舶設計案の評価を可能とした。 海上物流市場予測モデルについては、過去のデータを収集し、そのデータに基づいて原油価格や運賃といった外的要因により変動する指標の予測を行うモデルを開発した。指標の予測については、リアルオプション分析で一般的に利用される二項モデルによって行う。 船舶性能モデルについては、船型、エンジン、伝達効率、プロペラによってモデリングし、定義された主要目と運航条件においてどのような性能を発揮するか詳細に再現するモデルを開発した。この船舶性能モデルでは、ビューフォート階級等の気象条件を与えることにより、波による抵抗増加を考慮することが可能である。今後は、水槽試験やCFD(Computational Fluid Dynamics)等の利用によってさらに高精度化を行う予定である。その前段階として、実際に東京大学船型試験水槽における抵抗試験、オープンソースCFDソフトウェアOpenFOAMによるシミュレーションを行い、両者の比較によって精度の確認を行った。 海上物流収支計算モデルについては、市場予測、船舶性能モデルにしたがって、運航による売上や燃料費等のコスト計算を行う。開発した運航シミュレーションでは、コスト計算の結果に加えて、初期投資費用および船舶改修費用を考慮することで、DCF法によりリアルオプションを導入した船舶設計案のNPVの算出を可能とした。モンテカルロシミュレーションによりこのNPVの期待値と分散を計算し、リアルオプションを導入した船舶設計案の評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、船舶性能モデルの詳細化を行った上で、仕様決定プロセスでのケーススタディを行い、船舶の性能に影響を与える設計オプションの探索を行っていく。 具体的には、開発した船舶性能モデルに対して、実海域での船舶性能の評価の導入、CFD、水槽試験等の利用を行うことで、モデルの高精度化を行う。航路による海象条件により船舶の運航条件は大きく変わり、最終的な海上物流収支計算モデルにより得られる結果も異なると考えられる。このような差もモデルに組み込んだ上で、船型や省エネ付加物の価値を計算できるモデルへと詳細化していく。 運航シミュレータを詳細化した上で、海運会社において購入する船舶の仕様を決定する際の手続きを調査し、プロペラや省エネ付加物の換装についてその意思決定の支援を行う。ただし、プロペラ、省エネ付加物の換装から運航時に得られる経済的なメリットが大きいとしても、その初期投資が大きい場合には全体としての効果が小さくなってしまう。このため、現在の設計および建造技術で可能な運賃と原油価格の不確実性に対応する船舶のフレキシビリティについて海運会社、造船会社の調査を通じて検討する。 また、現状のシミュレータでは1隻の船舶のライフサイクルのみを考慮しているが、海運会社の意思決定プロセスを考えると船団での評価が必要となる。運航シミュレータに物流の需要評価を取り入れ、対象を船団へと拡張していくことを検討する。
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Research Products
(4 results)