2015 Fiscal Year Annual Research Report
レーザビーム制御による造船用厚鋼板溶接技術に関する研究
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15H04214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山本 元道 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30274111)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホットワイヤ / レーザ溶接 / マルチセンサーカメラ / 温度計測 / レーザビーム制御 / 低入熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の項目について研究を実施した. (1)マルチセンサーカメラを用いたモニタリング技術の開発:マルチセンサーカメラ中の2つのセンサーを用いた2色法による温度計測と同時に,可視化画像の取得を可能にする,合計4つの各種センサーを有するカメラを設計・開発した.溶融池およびその周辺の温度場計測には2つのCMOSセンサーを,溶融現象の可視化画像取得には他の2つのCMOSセンサーを用いるシステムとなっている.開発したカメラを用いて,ホットワイヤ・レーザ溶接中の温度計測,溶融池挙動,ワイヤ送給挙動などの取得を試みた. (2)半導体レーザによるビーム形状制御の検討:「反射レーザ光」による壁面溶融およびホットワイヤ送給による溶融池形成を安定かつ効率的に実現するため,半導体レーザによる「ビーム形状制御」を行い,その影響を調査した.本年度は,供試材料(母材,添加ワイヤ)を限定し,各種溶接パラメータ(レーザスポット幅・長さ,レーザ出力,溶接速度,ワイヤ送給速度など)それぞれが,溶融現象,欠陥生成に及ぼす影響を詳細に調査した.特に,レーザビーム形状(幅,長さ)およびレーザ出力が変化した場合の溶融現象の変化を,高速度カメラを用いた詳細な観察を行い把握した. (3)小型溶接継手部の各種特性評価:溶接部の詳細な観察およびシャルピー衝撃試験等により,各種溶接条件下でのビード形状,欠陥形成特性,冶金的特性,溶接部強度特性などを定量的に把握した.初年度は,主に,組織観察,硬さ計測を行い,本溶接法によって作製される継手の特長(特に,溶接金属および熱影響部の特長)を明らかにした.適正溶接条件を用いて小型試験片を作製し,シャルピー衝撃試験を一部実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の項目についての研究進捗について,当初予定通りにおおむね順調に進展していると考えている. (1)マルチセンサーカメラを用いたモニタリング技術の開発:本研究で使用するマルチセンサーカメラは,新しく設計・開発するものであるが,順調に試作機を導入できた.センサー性能は次年度にバージョンアップ予定であるが,現状,試作機としては十分な機能・性能を有している.キャリブレーションも問題なく終わり,トライアル実験も順調に進んでいる. (2)半導体レーザによるビーム形状制御の検討:高出力半導体レーザを用いて,矩形ビームの形状制御に関して基礎実験が順調に進んでいる.矩形レーザビームの長さ,幅をパラメトリックに変化させ,その影響を詳細に調査することができた.ウィービング装置も併用し,本溶接法でのエネルギー分布制御に関する基礎的知見を幅広く,定量的に取得するめどが得られた. (3)小型溶接継手部の各種特性評価:上述の基礎検討結果から,現状での適正条件を導出することができた.板厚12mmではあるは,高張力鋼板の突合せ継手を作製することができた.当該継手からシャルピー衝撃試験片を切り出して,一部実験を実施し,十分な靭性値を得ることができた.追加の継手も作製済みであり,シャルピー衝撃試験および引張試験片を加工中である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記検討結果を元に,引き続き以下の項目を実施予定である. (1)マルチセンサーカメラを用いたモニタリング技術の適用およびマルチセンサー高速度カメラの設計・製作:27年度に開発・製作したマルチセンサーカメラを用いて,ホットワイヤ・レーザ溶接中の温度場・温度履歴の計測,溶融池状態・ワイヤ送給状態の可視化などを実施する.得られた各種情報から,溶接欠陥(融合不良,ビード不整,スパッタなど)の検出アルゴリズムを検討する.また,高速度センサーを用いたマルチセンサーカメラを設計・開発し,より詳細な溶接現象の解明,および本計測手法の適用範囲の拡大を目指す. (2)半導体レーザによるビーム形状制御の検討:壁面溶融およびホットワイヤ送給による溶融池形成を安定かつ効率的に実現するため,半導体レーザ矩形ビーム制御を引き続き行い,その影響を詳細に調査する.27年度の検討結果から,スキャナを用いた精密ビーム制御は行わず,半導体レーザを用いた検討のみに注力する.特に,厚板適用に向けた,マルチパス施工時の適正ビーム条件について検討を行う. (3)施工裕度の検討:上記検討結果から得られた基本条件を中心に,各種施工裕度,特に,開先面性状(ガス切断の影響)と開先幅裕度(初期裕度,溶接中変化裕度)について詳細に調査する.半導体レーザを用い,大型の矩形ビームに対応できるウィービング装置を用いて検討する.
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