2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハイパースペクトル及び熱赤外データの統合処理による鉱物・岩相マッピング法開発
Project/Area Number |
15H04225
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 靖 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80283472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 英一 名古屋大学, 博物館, 教授 (30324403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リモートセンシング / ハイパースペクトルセンサ / 地質マッピング / ASTER / AVIRIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熱水変質鉱物や炭酸塩鉱物などの識別・同定に有効な可視~短波長赤外域のリモートセンシング・データと、ケイ酸塩岩等の識別に有効な熱赤外域のリモートセンシング・データを統合して処理し、効率的な地質マッピングを行える手法を開発することにより、広域的な地質調査や鉱床探査等に有効な鉱物・岩石マッピング法として確立することを目的としている。 これまでに、可視~短波長赤外域~熱赤外域の空間分解能が異なるスペクトル解析結果を判読しやすい一枚のカラー画像として提供するため、HSVカラーモデルを用いて統合するアルゴリズムを開発した。本年度は、衛星データから得られるスペクトル情報に加えて、ディジタル地形データ(DEM)も併用する方法を新たに開発し、米国ネバダ州Cuprite地域周辺のASTERデータに適用して有効性を評価した。また、マグマ性鉱床やスカルン鉱床等で見られる緑泥石、緑簾石などを対象として、それらの識別・同定を行うためのアルゴリズムを開発し、米国Cupriteおよびラスベガス周辺地域のASTERおよび航空機搭載ハイパースペクトル・センサであるAVIRISのデータに適用して有効性を評価した。以上のデータ解析結果について現地調査により検証と確認を行い、鉱物・岩石が正しく識別・マッピングされている場所と、それらが不十分な箇所を確認し、後者についてはその原因を検討した。 また、モンゴル国のテスト地域について、ASTERの可視~短波長赤外~熱赤外域のデータによる岩石・鉱物マッピングを行った。モンゴル国のテスト地域では、薄い植生被覆がその下の鉱物・岩石のスペクトル情報を覆い隠している場合が多い。このため、植生指標と鉱物指標の間の相関を取り、その相関を無くす方向に各スペクトルバンドの軸を回転させる直交変換により、植生の影響を軽減させる方法を適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、可視~短波長赤外域~熱赤外域の空間分解能が異なるスペクトル解析結果を判読しやすい一枚のカラー画像として提供するため、HSVカラーモデルを用いて統合するアルゴリズムを開発した。その際、色相(H)には鉱物の種類を、彩度(S)には鉱物の相対量を、明度(V)には地形情報を割り当てたが、地形情報としては衛星搭載マルチスペクトル・センサであるASTERの可視・近赤外域のデータを用いた。しかし、このデータは岩石・鉱物のアルベドに強く影響され、必ずしも地形を示さない場合があることが判明したため、明度にはディジタル地形データ(DEM)から計算した反転傾斜量と地上開度の重み付け平均を割り当てる方法を新たに開発した。この方法を米国ネバダ州Cuprite地域周辺のASTERデータに適用し、その有効性を現地調査で確認した。その結果、火砕流堆積物による平坦な台地状地形や、中古生界堆積岩類・深成岩類等の急峻な山地など、岩相に対応する地形の違いと、スペクトルから表現される鉱物・岩石の違いが1枚のカラー画像上に表現され、広域的な地質の判読に有効であることが確認できた。 一方、モンゴル国のテスト地域については、薄い植生被覆の影響を軽減する方法を検討し、この方法が鉱物・岩石の識別・マッピングに効果的であることを確認することができた。今後は、この方法を前処理として適用した後に、鉱物・岩石の識別・マッピング法を適用すれば、地質マッピングに有効であると考えられる。 本研究で開発した方法で作成したカラー画像は、リモートセンシングの知識が十分でない地質学者や地下資源探査専門家にとっても、地質マッピングの有力なツールになる。以上のことから、本研究が目指している成果が得られているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
リモートセンシングによって得られた可視~短波長赤外域および熱赤外域のデータから、効率的に地質マッピングを行うことのできる方法の取り纏めを行う。可視~短波長赤外域については、提供されているASTERの高次(レベル2)プロダクトの地表面反射率に問題があることが判明したため、前処理としてレベル1データから見掛け地表面反射率に変換する方法を検討し、その変換結果から鉱物・岩石の識別・同定を行うことができるアルゴリズムを開発する。熱赤外域については、分光放射率パターンから主にケイ酸塩岩の岩相を識別・マッピングする方法を開発し、既に開発した見かけ熱慣性による解析結果と比較検討する。これらの異なる波長域の鉱物・岩石の識別・マッピング結果を、HSVカラーモデルを用いた統合法により、最終的には1枚または2枚程度の少ない枚数のカラー画像に統合し、リモートセンシングの知識が必ずしも十分でない地質学者や地下資源探査担当者にとっても、地質学的な解釈がしやすい画像として提供できる手法として完成させる予定である。 これまでに開発した手法を米国ネバダ州のテスト地域のASTERおよびAVIRISデータに適用し、熱水変質帯、スカルン変質帯、炭酸塩岩、ケイ酸塩岩などの識別・マッピング結果に対して、現地調査による検証・確認を実施する。現地調査による採取試料は、実験室内でスペクトロメータによって反射スペクトルを取得し、画像上でのスペクトルと比較する。またモンゴル国南部ゴビ地域を対象としたASTERデータの処理結果について、主に斑岩銅鉱床に関連すると思われる熱水変質帯の抽出結果の現確認調査を行う。これらの新たに開発した鉱物・岩石マッピング法や現地確認結果について取りまとめ、学会発表や学術雑誌への投稿を行う予定である。
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[Presentation] ASTER 17-year operation status and future activities2017
Author(s)
Yamaguchi, Y., Iwao, K., Kouyama, T., Kato, S., Kashimura, O., Fujita, M., and Tachikawa, T.
Organizer
International Symposium on Remote Sensing 2017
Int'l Joint Research
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