2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカル・放射能イメージングによるセシウムの収脱着ダイナミクス解明
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15H04246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 拓巳 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90436543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田野井 慶太朗 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90361576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 粘土鉱物 / 収着 / 脱離 |
Outline of Annual Research Achievements |
【長期の収着・脱離実験】長期の収着・脱離実験に供する試料として,南ア産のバーミキュライトと比較のために米国産のイライトを選定し,それぞれ,粉砕・篩分けの後,X線回折,X線蛍光分析,陽イオン交換容量測定,透過型電子顕微鏡観察等による特徴付けを行った.イオン交換可能なサイトをK+,Ca2+イオンで置換した鉱物試料に対して,Cs-137をトレーサーとして添加したCs溶液を添加し,Csの吸着量の経時変化を評価した.その結果,Cs+濃度が50 nMと低いにもかかわらず1 mMのK+存在下で5割以上の,Ca2+では9割以上のCsが吸着した.異なる時間,Csを吸着させた鉱物試料の液相を,遠心分離によって除き,Csを含まない電解質溶液に替えることで,脱離実験を行った.Ca型イライト以外の試料では,脱離開始12時間後の時点で7割以上のCs+が脱離しており,雲母系鉱物に吸着した微量のCsの多くは,PBによってCs+の再吸着を抑制することで,K+によって,バーミキュライトの場合はCa2+によっても,脱離可能であることが示された.一方,Ca型イライトでは,ゆっくりとCs+が脱離し,最終的に吸着したCs+の約8割が脱離した.
【近赤外顕微分光測定】既存の赤外分光光度計を拡張し,近赤外域での顕微測定が可能なシステムを構築した.予察的な測定として,黒雲母シートの観察から,層間の水分子の近赤外吸収スペクトルが測定可能であること分かった.さらに,試料厚さを十分薄くすることで,中赤外域の透過スペクトルの測定可能であることも分かった.そして,得られたスペクトルの吸着時間やCs濃度,共存陽イオン濃度に対する依存性から,次年度以降に実施する実験条件の最適化を行った.
【オートラジオグラフィ測定】上述した収着・脱離実験の結果や近赤外顕微分光測定の結果を参考に,イメージングプレートの種類や露光時間の最適化を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
長期の収着・脱離実験では,当初予定したバーミキュライトに加え,イライトに対しても,Csの吸着・脱離実験を実施できた.そして,それら2種類の雲母系鉱物試料に対するCsの吸着量の経時変化,および,異なる時間Csを吸着させた試料からのCs脱離量の経時変化を,競合陽イオンの種類・濃度を変えた条件で詳細に評価し,吸着・脱離メカニズムの推定を行うことができた. 近赤外顕微分光測定では,試料厚さを十分薄くすることで,中赤外域での層間水分子の吸収スペクトルの顕微測定が可能であることを明らかにした.これによって,当初予定していた近赤外域における顕微観察と組み合わせることで,より詳細に層間水の状態変化を調べることが可能となった.したがって,本研究の最終目的の一つである,Csの収着・脱離に伴う層間の変化の直接観察に資する進捗があったものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
【長期の収着・脱離実験】吸着時間,脱離時間を長くし,より長期間でのCsの吸着・脱離挙動を評価し,吸着・脱離メカニズム自体の経時変化を検討する.
【近赤外顕微分光測定】構築した近赤外顕微分光測定を用いて,Csの吸着・脱離による層間の変化を,水分子の状態変化を通して,直接観察する.その際,中赤外域の測定とも組み合わせることで,より詳細な評価を行っていく.そして,上記の【長期の収着・脱離実験】の結果と組合せ,雲母系鉱物層間中でのCsの化学状態の変化や層間内の拡散などの移行プロセスと吸着・脱離挙動を関係づけていく.
【オートラジオグラフィ測定】 近赤外顕微分光測定と同じ鉱物薄片試料にCs-137を異なる時間吸着させたもの,また,そこからCs-137を脱離させたもののオートラジオグラフィ測定により,Cs-137の分布の変化を評価する.そして,上記の【近赤外顕微分光測定】を補完するデータを得る.
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Research Products
(4 results)