2015 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞‐微小環境相互作用の高機能疾患モデル「がんゼノ患者」による多面的解析
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15H04287
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中村 雅登 東海大学, 医学部, 教授 (00164335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 総括部長 (00254194)
石川 俊平 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50418638)
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
千々和 剛 実験動物中央研究所, 腫瘍研究部, 研究員 (70642180)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 患者由来ゼノグラフト / 微小環境 / 相互作用 / インタラクトーム解析 / がんゼノ患者モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はがんゼノ患者モデル作出を中心に研究を進めた。過去約5年間に渡り継続・実施してきたがん材料からのPDXの樹立結果をまとめ、報告した(”Establishment of patient-derived cancer xenograftsin immunodeficient NOG mice” Tsuyoshi Chijiwa, Yohei Miyagi, Masato Nakamura; International Journal of Oncology, DOI: 10.3892/ijo.2015.2997)。神奈川県立がんセンター/東海大学医学部付属病院にて治療目的手術で採取される各種進行がん材料(約100症例)をNOGマウスに移植した。生着した腫瘍については継代移植と凍結保存を実施した。継代の際には免疫組織化学的にがん細胞・組織の形態学的変化の有無を確認する。継代移植3代を経たものをPDX (Patient Derived Xenograft)株として樹立した(約80株)。 このPDXとヒトがんの臨床情報を系統的に一体化し、擬似的に各患者と同等とみなして各種創薬研究に応用展開可能な新世代の疾患モデル(がんゼノ患者: Cancer Xenopatient, CXP)として確立した。また一部のPDX標本/臨床病理標本について、相互作用分子(主として増殖因子とその受容体)の発現を免疫組織学的に検討し、臨床経過と標的分子局在の整合性検討を行った。また各種幹細胞マーカーの免疫組織学的検討によりCSC-niche/PDXを選択的に追跡する技術を確立することを目指し、CSC-nicheを組織学的・免疫組織化学的に解析した。更に、一部のPDX/NOGについて、細胞全RNAを抽出し、継代移植ごとにインタラクトーム解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PDXおよびCSC-niche/PDXに、ヒトがん患者材料(血清、がん組織、病理組織材料など)の臨床情報(治療経過、化学療法など)を系統的に一体化する適切なフォーマットが無く、時間を要している。擬似的に各患者と同等とみなし、各種創薬研究に応用展開可能な新世代の疾患モデル(がんゼノ患者: Cancer Xenopatient, CXP)とするための情報の標準化がに時間を要した。 樹立されたPDX/NOGをさらに繰り返し継代移植することによりCSC-nicheを濃縮したCSC-niche/PDXの樹立を進めたが、一回の継代に要する時間にばらつきがあり、十分CSCをin vivo濃縮することができなかった。 PDX/NOGの継代移植ごとにインタラクトーム解析を一部実施できたが、十分な継代数の解析には至らなかった。そのため、CSC-niche/PDXの樹立過程における相互作用の変化を解析する段階には至っていない。インタラクトームデータベースをもとに、相互作用を遺伝子発現の量、強さ、向き(CSC依存性、niche依存性)から、依存性の高い相互作用分子を抽出する段階には到達できていない。 PDX/NOG/CXPモデルについての解析結果と既存の抗癌剤・分子標的薬の効果解析結果との統合的な解析が不十分で、がん幹細胞標的分子の抽出には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
このPDXおよびCSC-niche/PDXに、ヒトがん患者材料(血清、がん組織、病理組織材料など)の保存から臨床情報(治療経過、化学療法など)を系統的に一体化し、擬似的に各患者と同等とみなし、各種創薬研究に応用展開可能な新世代の疾患モデル(がんゼノ患者: Cancer Xenopatient, CXP)の形成に努める。 樹立されたPDX/NOGをさらに繰り返し継代移植することによりCSC-nicheを濃縮したCSC-niche/PDXの樹立を進める。十分量までCSCをより短時間でin vivo濃縮し、更なる、迅速化を目指す。 PDX/NOGの継代移植ごとにインタラクトーム解析を継続する。CSC-niche/PDXの樹立過程における相互作用の変化を解析する。インタラクトームデータベースをもとに、相互作用を遺伝子発現の量、強さ、向き(CSC依存性、niche依存性)から、依存性の高い相互作用分子を抽出する。既に、PDX/NOG/CXPモデルについての解析結果から、既存の抗癌剤・分子標的薬の効果予測となりうるデータや新規標的分子候補の可能性を検討する。
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