2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a novel strategy for the elimination of cancer cell inactivated p53
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15H04305
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
土屋 直人 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (30322712)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | p53 / microRNA / がん抑制ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん抑制因子p53について、その遺伝子変異の有無によって形成されるがん抑制ネットワークを同定・理解し、それらを標的とした革新的ながん治療薬の創出に資する基盤的研究を展開している。昨年度は、野生型p53が制御する核小体ストレスの制御にmiR-101が深く関連していることを明らかにした。miR-101は、p53変異の有無によって誘導する表現型が異なるが、野生型p53を有する場合は、強い細胞死を惹起する。そのメカニズムの解析を行い、p53依存的核小体ストレス応答反応に特異的にmiR-101が寄与していることを明らかにした(論文投稿中)。一方、p53を欠失したがん細胞対して、選択的に細胞死を誘導するmiRNAをスクリーニングし、それが制御する細胞内ネットワークの解析も実施した。1020種類のmiRNAを含んだmiRNAライブラリーを用いて検討した結果、miR-584が再現性よく、p53欠失細胞へと細胞死を誘導することを見出した。miR-584が制御する細胞内ネットワークの同定も行い、候補となる複数の細胞内経路を同定した。中でも、がん抑制遺伝子RASSF2が、p53欠失細胞で選択的にmiR-584によって誘導されることを見出した。RASSF2は多くのがんでDNAメチル化によって抑制されていることが知られている。p53野生型細胞に比べて、その欠損細胞では、もともとのRASSF2の発現量は低く、ヒストン修飾によって抑制されていることを見出した。詳細な検討の結果、p53の機能欠損によって、エピジェネティックな遺伝子発現制御領域が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-101によって制御されるp53依存的な内在性がん抑制ネットワークを同定し、その臨床的意義を見出した。現在、その成果について論文を投稿中である。p53不活化がん細胞の選択的排除法の確立に資する、細胞内ネットワークの同定を行った。miRNAの特性を利用して、細胞内ネットワークを明らかにするため、1020種類のmiRNAライブラリーを用いて、p53欠失細胞に選択的に細胞死を誘導する分子をスクリーニングし、miR-584を同定した。miR-584によってp53欠失細胞で特異的に制御される細胞内ネットワークの検索を行った。その結果、RASSF2が関与する細胞死誘導ネットワークがp53欠失細胞で優位に亢進できることがわかった。一方、なぜそのネットワークがp53機能が不活化した細胞でのみ誘導可能であるかそのメカニズムの解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、p53不活化がん細胞におけるRASSF2遺伝子発現制御の分子機構を詳細に解析する。標的となるヒストン修飾酵素(同定ずみ)をノックダウンすると、p53不活化がん細胞において、顕著にRASSF2発現が上昇する。そのメカニズムとp53との関連を明らかにする。 1. ChIP法によるRASSF2遺伝子領域のヒストン修飾の解析:RASSF2遺伝子に関して、当該領域のヒストン修飾の状態や、ヒストン修飾酵素の結合を定量化する。これまでの解析から、p53変異・不活化によってヒストン修飾によって制御されるゲノム領域が異なることが示唆されている。したがって、ChIP-Seqによりp53不活化によるエピジェネティック制御領域の違いを明らかにする。 2. RASSF2下流遺伝子の同定とネットワークの全容解明:RASSF2の下流に位置し細胞死の誘導を規定する分子の同定を行う。これまで、候補となる分子を複数同定しているが、それらの発現とRASSF2、さらにはエピジェネティックな制御との関連についても解析を加える。 3. miR-101の下流でp53依存的細胞死を規定する分子の同定:miR-101は、p53依存的核小体ストレス経路を制御する因子である。miR-101の下流でアポトーシスの抑制に関連する分子を同定できれば、核小体ストレス誘導剤と分子標的薬の組み合わせによって、効率良くがん細胞を排除できることが示唆される。すでに、候補分子は絞り込めているため、本年度は詳細に検討を重ね、責任分子を同定する。
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