2016 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of force-sensing system and gene expression.
Project/Area Number |
15H04327
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椋 利彦 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 力刺激 / 細胞質/核移行 / MKL2 / Hippo / メカノトランスダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
力刺激が細胞質から核内に伝達される時のメディアーターとして、MKL2を見出し、伸展とずり応力の二つの力学刺激の伝達メカニズムの分子機構を詳細に研究してきた。しかし、力刺激を加えた直後からのリアルタイムでの観察は困難であった。幸い、ずり応力印加装置の透明化によってムービーの取得が可能となって、MKL2の核内シャトルの実際を観察できた。その結果、MKL2のシャトルは、ずり応力を加えた直後から起こる、極めて早い反応であることがわかった。このことは、これまでにMKL2の核内シャトルを制御していると考えられてきた F-actin/G-actin比の解釈に一定の変更を余儀なくする。そして、新たに Ca による制御の可能性が出てきた。本年度は、Ca によって、MKL2の核内シャトルがいかに制御されているか、その分子メカニズムの解析に集中した。そして、一定の知見が集積され、論文化に必要なデータの蓄積を行った。 また、Tbx5/MKL2複合体が転写活性化を起こす時に必要な未知因子の特定を行い、Nppa遺伝子プロモーター上のA/T-rich 配列結合因子の identity について結論を得た。これに関するデータは、別論文として発表するのがふさわしいと考え、本年度に論文化に必要なデータの取得を行った。加えて、MKL2 の骨格筋での機能を解析する目的で、骨格筋特異的 Cre マウスを用いて KO マウスの作出を行った。残念ながら、骨格筋での Cre の発現が弱く、完全な KO にはならないことが判明し、掛け合わせを反復しながら完全な KO マウスの作出を試みた。また、MKL2のゼブラフィッシュの機能解析を目的として、MKL2-EGFP など、可視化を目的としたラインの作製も同時進行で行い、複数のラインの作出が完了した。これらの実験動物は、今後の研究に極めて有益であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね、順調に進展している。特に、ずり応力印加装置の透明化によって、これまでにできなかった顕微鏡観察が可能となり、また、ムービーの取得も可能となって可視化に大きな進展があった。そして、MKL2の核内移行に関して、これまでにない知見を得ることができた。また、Hippo シグナル機構と力刺激の機能的な関係について、Strawberry Notch 1 と言うクロマチン因子が転写活性化に重要な機能を持つことが証明され、この知見は Scientific Reports に in press rとなっている。MKL2に関しても、論文化に向けてデータ蓄積が進展しており、全体として、研究は順調に視点している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ずり応力印加中の MKL2 の挙動に関して、ライルタイムの観察が可能となし、ムービーとして可視化することもできるようになった。これを基にした新知見の蓄積を最終年度に進め、できるだけ速やかに論文とし発表したい。また、Nppa promoter 上の A/T-rich 配列結合因子と Tbx5/MKL2 転写活性化複合体の関係についても、早急に論文化を進める。 また、MKL2 の骨格筋での解析(特に、exercise と代謝、sarcopenia 予防について)を目的として MKL2 KO マウスを作出中であるが、Cre の発現が弱いため、時間がかかっている。最終年度は、今後の研究を伸展させるためにも重要なマウスであり、このマウスの作出を完成させる。本研究中に、MKL2 が circadian の制御を受けていることが Cell に発表されるなど、力学刺激(運動、代謝)に関して新知見がもたらされている。我々の研究から、MKL2 と Ca の関係が指摘できたことは、これと機能的に連関していると考えられる。このような知見は、力学刺激の意義を医学的に追求する端緒となるため、極めて重要であると考えている。最終年度(あるいはその後の継続研究)のためにも、この視点を大事に、研究を推進する。
|
Research Products
(1 results)