2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト由来膜タンパク質の機能構造解明に向けたNMRアプローチ
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15H04340
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 栄夫 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60265717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬分子プロファイリング研究センター, 主任研究員 (20581284)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | NMR / 膜タンパク質 / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、ヒト膜タンパク質発現において実績のあるメタノール資化性酵母P. pastorisを用いた、高分子量タンパク質に適応する同位体ラベル技術である、メチル基選択的C13ラベル技術、特にこれまでラベルが不可能とされていたLeu、Valメチル基の標識を可能としたが、ラベル化効率は高いものとはいえなかった。本年度は、ラベル化率を簡便かつ精度よく計測するための、TOF-MSによる手法を確立するとともに、培養条件の多岐にわたる検討(前駆体添加時期・添加量、メタノール誘導方法・頻度、酵母細胞株、等)を実施することで、モデルタンパク質において70%を超えるラベル化効率を達成することに成功した。 本ラベル手法のヒト膜タンパク質への適用を指向し、アラキドン酸代謝に関係するMAPEGファミリーの3種類の膜タンパク質のPichia酵母発現系を複数構築し、発現実験、可溶化条件検討などを実施し、上記メチルラベル技術を実施するための準備が整った。また、創薬標的として重要なGPCR発現系の構築も完了した。 一方、前年度に開発したN15観測TROSY手法について、今年度は、異なる磁化移動方式を採用することで、分子量150Kを超えるタンパク質についてNMRシグナルの観測に成功した。本測定法をナノディスク(分子量200K程度に相当)に対して適用したところ、ナノディスク構成タンパク質のMSP由来のシグナルの観測が可能であった。 また、これまでの膜タンパク質の構造生物学研究では解析することが困難であった、周辺環境の相違が当該膜タンパク質の物性・機能発現に与える影響を解析する目的で、鎖長・飽和度の異なる脂質を用い作製したナノディスクに埋め込んだ、ヒト一回膜貫通タンパク質のNMR解析を実施した。その結果、脂質二重膜の流動性が、膜貫通領域の運動性に相関していることが明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子量膜タンパク質のNMR構造解析において有効と考えられるメチル基選択的C13ラベル法を酵母P. pastorisに適応させるアプローチについては、ラベルアミノ酸前駆体であるα-ケト酸の細胞取り込み速度に着目した条件検討を行うことで、観測に十分なラベル化率を達成することができた半面、ラベル化率の向上と発現量に負の相関が見られたため、適切な培養条件の決定に時間がかかった。また、ラベル化率を定量化するための質量分析を用いた方法の確立についても、その途上で、装置の故障があったため、当初の想定より時間を要したが、最終的には、高効率・精度良くラベル化率を求めることが可能となっている。 開拓したラベル化技術を適用するためのヒト膜タンパク質発現系の構築は、発現量にバラツキは見られるものの、おおむね順調に進んでいる。 前年度発表した、高分子量膜タンパク質およびその複合体を解析することを可能とする測定技術であるN15観測TROSY法について、今年度は、異なる磁化移動方式を採用することで、分子量150Kを超えるタンパク質についてNMRシグナルの観測を行うことが可能となった。上述の酵母発現系を活用した調製系で得ることが可能となってきたメチル基選択的C13ラベル試料による高感度の側鎖情報に加え、主鎖からの情報を得るための基盤も整ってきた。 ナノディスクを活用した膜タンパク質NMR解析アプローチについても、膜貫通領域のダイナミクスに、脂質二重膜環境の相違が影響しているという興味深い現象を得ることができた。ただし、膜タンパク質の種類によって再構成ナノディスクの収量が大きく異なることから、その調製法を改良していくことが今後必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
酵母細胞を活用したラベル化法については、発現が確認された膜タンパク質への適用を進め、その有効性を実証するとともに、生命科学的に重要な現象の解明に活用する。特に、周辺環境(脂質二重膜環境、界面活性剤環境、等)の相違と、膜タンパク質挙動の変化、活性との対比に関する情報の取得を目指す。
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Research Products
(18 results)