2016 Fiscal Year Annual Research Report
単一巨大リポソーム法による抗菌ペプチドと膜透過ペプチドの機能のメカニズムの解明
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15H04361
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山崎 昌一 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70200665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 俊彦 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60344389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単一巨大リポソーム法 / 抗菌ペプチド / 細胞透過ペプチド / 脂質膜中のポア形成 / 脂質膜の張力 / 生体膜のイメージング / 脂質膜のキュービック相 / 生体膜のダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)細胞透過ペプチド(CPP)のオリゴアルギニン(R9)の膜透過性やその素過程を、我々が開発したCPP用の単一巨大リポソーム法を用いて研究した。DOPG/DOPC膜のGUVとの相互作用では、水溶性の蛍光プローブの漏れを誘起せずに蛍光ラベルしたR9 (CF-R9) はGUV内腔に侵入した。GUV内腔への侵入速度はDLPG/DTPC (2/8) 膜の方がDOPG/DOPC(2/8) 膜よりも大きかった。さらに、DLPG/DTPC (4/6) 膜の場合は、CF-R9はAF647の漏れを誘起するポア(小さな孔)を膜内に形成し、そのポアを介してCF-R9はGUV内腔へ侵入した。以上の結果からR9の膜透過性のメカニズムの仮説を提案した。 (2) CPPのトランスポータン10 (TP10)の膜透過性に対する脂質膜の力学的性質の効果を上記と同様の方法を用いて研究した。GUV膜の張力が増加するにつれて、CF-TP10のGUV内腔への侵入速度は増大した。また、膜に高濃度のコレステロールが存在する場合はCF-TP10のGUV内腔への侵入は起こらないことを見出し、それはCF-TP10のGUVの外側の単分子膜から内側の単分子膜への移動が抑制された結果であることがわかった。以上の結果からTP10の膜透過のメカニズムを提案した。 (3)張力による荷電した脂質膜中のポア形成の活性化エネルギーを初めて測定することに成功した。また、その活性化エネルギーを含む式を用いて、ポア形成の速度定数の張力依存性の実験結果を良く説明することができた。 (4)浸透圧がかかったリポソームの脂質膜にかかる張力を実験的に求めることに初めて成功し、構築した理論からもとまる値と実験誤差範囲内で一致することを見出した。さらに浸透圧による脂質膜のポア形成の張力依存性を求めることに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜透過ペプチド(CPP)とGUVの相互作用や膜透過に関して多くの成果を発表できた。CPPの一つであるオリゴアルギニン(R9)の膜透過の速度が脂質膜組成に依存するだけでなく、そのメカニズムも脂質膜組成に依存することが明らかになった。また、膜の張力によるCPPの一つのTP10の膜透過の速度の増加の発見は、その膜透過のメカニズムの解明に貢献した。抗菌ペプチドによる脂質膜中のポア形成を理論的に考察するための外力により誘起される張力による脂質膜中のポア形成に関しても成果を発表できた。さらに、膜に張力を誘起する方法の一つである浸透圧を新しい角度から研究し、浸透圧がかかったリポソームの脂質膜にかかる張力を実験的に求めることに成功した。また、抗菌ペプチドのマガイニン2のポア形成のメカニズムに関しても多くの成果が得られ、現在論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)抗菌ペプチド・マガイニン2 (Mag) のポア形成のメカニズムを、昨年度に引き続き研究する。また、アミノ酸を置換したマガイニン2を用いて、ポア形成と膜の伸展や張力との相関を引き続き調べる。 (2)他の抗菌ペプチドのポア形成の単一GUV法による研究とそれらに対する外力等による膜の張力の効果を、昨年度に引き続き研究する。 (3)膜透過ペプチド(CPP)の脂質膜透過に影響を与える物理的因子を研究し、その膜透過のメカニズムを解明する。 (4)外力等による膜の張力が膜の物性に与える効果を、昨年度に引き続き研究する。 (5)CPPと膜の相互作用による膜の構造変化とその基礎研究である脂質膜の2分子膜液晶相とキュービック相の間の相転移を、昨年度に引き続き研究する。
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Research Products
(27 results)