2016 Fiscal Year Annual Research Report
動物群に特徴的な保存形態を生み出す発生メカニズムとそれを制御する保存ゲノム配列
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15H04374
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 宏治 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70261550)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 進化発生 / ゲノム進化 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の3つの項目(①~③)について解析を進め、研究実績を得た。 1. 鳥類特異的な保存形態の発生メカニズムの解明については、平成28年度は寛骨形態について集中的に解析を行った。爬虫類と鳥類の複数種(ソメワケササクレヤモリ、スッポン、ニワトリ、ウズラ、エミュー、ダチョウ)について、複数発生段階の寛骨と大腿骨を組み合わせて器官培養を行うことで、寛骨形成に関わる組織の特定を行い、爬虫類と鳥類の寛骨形成機構の違いを明らかにした。 2. 鳥類特異的なゲノム保存配列を元にした、特徴的形態制御配列の同定について、平成28年度は鳥類に特異的なエンハンサー配列についての解析結果をまとめ、論文の投稿を行い、いくつか議論に必要となる発現解析等を追加したうえで、論文を公表した。 3. 保存形態の喪失メカニズムの解明については、平成28年度は11月頃に産卵期を迎える予定であったペンギンが産卵をせず、十分な受精卵が得られなかったために、ペンギン胚を用いて行う予定だった実験については翌29年度に繰り越して実験を行った。ペンギンの第1指の矮小化と肢芽の上皮構造であるAERとのかかわりについて、遺伝子発現解析や細胞死の検出などの解析をすすめ、AERの退縮と第1指の矮小化に強い相関があることを明らかにした。また、より少ないサンプルから結果を得るために、トランスクリプトーム解析を行うため、ペンギン胚、ニワトリ胚、アヒル胚からそれぞれmRNAを抽出し、RNA-seqを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、ペンギン胚を用いた保存形態の喪失メカニズムの解明に関する解析においては、ペンギンの産卵状態から一部の実験を翌年度に繰り越さざるを得なくなったが、翌年度の春にはペンギンの受精卵が得られ、予定していた実験はほぼ終了することができた。また、鳥類特異的なゲノム保存配列を元にした、特徴的形態制御配列の同定については、これまで行ってきた鳥類に特異的なエンハンサー配列についての解析結果を論文として発表するなど、研究は順調に進んでおり、これらのことからおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
① 鳥類特異的な保存形態の発生メカニズムの解明の「鳥類前肢の3本指」という保存形態に関して、③ 保存形態の喪失メカニズムの解明において明らかとなったAERの退縮と第1指の矮小化、と合わせてまとめる予定であった論文に関しては、当初予定のニワトリとペンギンの他に新鳥類のキンカチョウで解析を行うことで仮説の裏付けを行い、論文をまとめる予定である。② 鳥類特異的なゲノム保存配列を元にした、特徴的形態制御配列の同定については、non-cording RNAのほかに、タンパク質をコードする配列についても着目し、解析する。また、ペンギン受精卵の準備の予測が難しい状況が続いていることから、より確実に無駄のない実験を行うため、ペンギン胚の孵卵方法を画一化し、より確実に目的の発生段階の胚が取得できるよう、フンボルトペンギンの発生段階表を確立する予定である。
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Research Products
(13 results)