2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04380
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
上野 直人 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 教授 (40221105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 誠 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (10533193)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胚葉形成 / 原腸形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、細胞集団として協調した運動を可能にしている力学的プロセスに着目し、細胞集団内に発生する接着力を含めた力場を物理的手法によって定量することによって、組織としての運動様式を理解することを目的としている。具体的には、アフリカツメガエルの原腸形成において集団的移動することが知られている中胚葉組織の細胞集団(Leading Edge Mesoderm: LEM)の移動を、牽引力顕微鏡を用いて観察し、細胞の集団的移動における個々の細胞のダイナミクスとその時に生じる牽引力の向き・強さ・分布を明らかにすること、最終的に集団的移動の一般的様式の提唱を目的としている。 平成27年度は当初の計画通り、牽引力顕微鏡を用いた力場測定に適した胚組織の培養と組織移動の観察方法の確立を行った。市販のフィブリノーゲンでコートしたポリアクリルアミトドゲル上に、LEMの内在誘引物質の一つであるアフリカツメガエルSDF1αを強制発現させた胚の一部を配置することで、LEMの集団的移動を牽引力顕微鏡観察システムにおいて安定的に再現することができた。さらに実際、確立したこの観察システムにおいて、LEMが集団的移動する際に産み出す牽引力を測定することができた。この観察の結果、LEMが集団的に移動する時に生じる牽引力の分布がダイナミックに変化していること、また集団内で特定のLEM細胞が移動に必要な牽引力を産み出していないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度においては、牽引力顕微鏡を用いた力場測定に適した胚組織の培養と組織移動の観察方法の確立を行った。本研究計画で用いるLEMの移動に関しては、これまでの研究においてはガラスディッシュ表面に胞胚腔蓋(blastocoel roof: BCR)の表面を覆う細胞外基質を転写することで、LEMの移動の観察を行っていた。しかし、牽引力の観察にはポリアクリルアミドゲルに包埋した蛍光ビーズの微小な移動を観察する必要があるため、従来のガラスディッシュを用いた方法は適していない。そこでまず、ガラスディッシュでの観察時と同様にBCRによる細胞外基質の転写をポリアクリルアミドゲルにおいて行ったが、LEMの集団的移動を観察することができなかった。次に、以前にLEMの集団的移動の観察に用いられた方法(Fukui et al. 2007 BBRC)を参考にし、内在誘引物質の一つであるSDF1αを用いることで、LEMの集団的移動をポリアクリルアミドゲル条件下で再現することに成功した。この構築した観察系を用いて、LEMの集団的移動時における牽引力の向き・強さ・分布の変化を観察できた。この観察結果より、まず、LEMは移動前に回転し、その後個々のLEM細胞が仮足の伸長を示すことが明らかとなり、この間は強い牽引力は観測されなかった。仮足の伸長後、LEMは集団的移動を開始するが、その際、局所的な牽引力はLEM前方の両端と後方の中央部に観測された。さらに、LEM前方の牽引力が増加し、後方でみられた局所的な牽引力は解消されることを観察した。また、個々の細胞のダイナミックな移動が集団的移動時のLEM内で見られた。これら結果と既に観察されているLEM移動中の個々の細胞の位置の変化と合わせて、LEMの集団的移動時の牽引力の分布のダイナミックな変化には個々の細胞の組織内での移動が関与している可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに集団的移動時の牽引力観察のための胚組織LEMの培養と組織移動の観察方法を確立し、実際にLEMが集団的移動する際に生じる牽引力向き・強さ・分布を明らかにできた。今後は、まずこの方法を最適化するとともに、より大きなLEM組織を用いた観察のための条件検討を行う。現在の観察条件においては組織全体の牽引力を測定できるLEMの大きさが直径約200μm(細胞数20~30)に限られている。今後は、顕微鏡の条件や蛍光ビーズ濃度等を検討し、より細胞数の多いLEMを用いて、牽引力のダイナミクスを測定する。また、現在注目している集団的移動している組織内での個々の細胞の位置の変化もH2B-GFPなどの蛍光タンパク質による核の標識により測定する。この測定により得られた核の位置データを用いて、「相互作用モデル」に基づく数理モデルを構築する。このモデルにより、集団的移動中のLEM内の細胞動態に関与する力の法則性を見いだすことができる。さらに、細胞骨格系、細胞の移動に一般的に重要であるとされているRho、Rac及びPaxillinの動態をGFP等で蛍光標識し、それらのタンパク質のダイナミクスを観察する。最終的にドミナントネガティブ型タンパク質や特異的アンチセンスモルフォリノオリゴ(MO)を用いてこれらのタンパク質の機能阻害を試みる。ドミナントネガティブ型タンパク質をコードするmRNAやMOの顕微注入する濃度・胚の位置をコントロールすることによって、モザイク的にLEM内の一部の細胞のみでこれらの影響を与えることが可能である。このことを利用して、機能阻害された細胞数と集団的移動、組織内での個々の細胞の位置の変化及び牽引力の分布の変化の影響を観察する。この観察結果を前述のモデルへフィードバックし、構築した数理モデルの妥当性を検証し、細胞が集団で移動する際の一般的な理論を構築する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Conservation of structure and function in vertebrate c-FLIP proteins despite rapid evolutionary change.2015
Author(s)
Sakamaki, K., Iwabe, N., Iwata, H., Imai, K., Takagi, C., Chiba, K., Shukunami, C., Tomii, K., and Ueno, N.
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Journal Title
Biochemistry and Biophysics Report
Volume: 3
Pages: 175-189
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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