2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜プロトンポンプの多様な生理機能と活性制御機構の解明
Project/Area Number |
15H04386
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 俊則 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (50271101)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物 / 細胞膜プロトンポンプ / 光合成 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜プロトンポンプは、維管束植物の根での無機養分取り込み、篩部でのスクロース取り込み、気孔開口など多くの生理現象において重要な役割を果たしている。近年申請者らは、苔類ゼニゴケの細胞膜プロトンポンプが光合成に依存して活性化されること見出した(Okumura et al. Plant Physiol 2012)。さらにこの現象は、気生藻類である車軸藻植物門クレブソルミディウムや維管束植物シロイヌナズナの葉肉細胞においても観察されることを見出し、陸生植物に共通した普遍的な生理現象であることが明らかとなってきた。しかし、そのシグナル伝達や生理的意義は不明である。 そこで、本研究では、「光合成に依存した細胞膜プロトンポンプの活性化機構の解明」、「細胞膜プロトンポンプの活性化前後におけるホスホプロテオミクス解析」、「細胞膜プロトンポンプの複合体を構成するタンパク質の同定と機能解析」、「植物ホルモン・ブラシノステロイドによる細胞膜プロトンポンプの活性調節機構の解析」、「苔類ゼニゴケの細胞膜プロトンポンプの機能解析」、「車軸藻植物門クレビソルミディウムの細胞膜プロトンポンプの機能解析」について解析を進め、進化的に保存された光合成に依存した活性化機構とその生理的意義を明らかにし、陸生植物における細胞膜プロトンポンプの多様な機能と活性制御機構を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)「植物における光合成に依存した細胞膜プロトンポンプの活性化機構の解明」これまでの生理・生化学・遺伝学的な解析の結果、光合成によって葉肉細胞にスクロースが蓄積することでこの現象が引き起こされていることを証明し、国際誌Plant Physiology(Okumura et al. 2016)に発表した。また、細胞膜プロトンポンプの活性測定方法を取りまとめ、Okumura and Kinoshita (2016) Bio-Protocolを発表した。さらに、葉で光合成を誘導する光照射を行うと、根の細胞膜プロトンポンプが活性化されることを見出し、長距離シグナル伝達を介した活性調節機構が存在することを見出した。現在、長距離シグナル伝達に関わるシグナル因子の解析を進めている。 2) 「植物ホルモン・ブラシノステロイドによる細胞膜プロトンポンプの活性調節機構の解析」これまでの研究により、ブラシノステロイドが受容体BRI1を介して黄化胚軸の細胞膜プロトンポンプの活性化をC末端からの2番目のスレオニン残基のリン酸化を引き起こし、活性化することを見出し、胚軸伸長において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。現在、これらの結果を取りまとめ、国際誌に投稿し、審査中である。 3)「苔類ゼニゴケの細胞膜プロトンポンプの機能解析」これまで機能解析が全く行われていないゼニゴケの細胞膜プロトンポンプの機能解析を進めるため、植物体全体に普遍的に発現しているMpHA3、無性芽杯の基部に発現するMpHA9や雄器托に特異的な発現の見られるMpHA7のCRISPR/Cas9システムによる遺伝子破壊株を作成し、解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究により、光合成による細胞膜プロトンポンプの活性化やホルモンによる活性制御など様々な興味深いシグナル伝達機構が明らかとなってきた。今後は、さらにその生理的意義の解析を進めるとともに、植物の陸上化における細胞膜プロトンポンプの生理機能について進化的な側面からも解析を行うために、車軸藻植物門クレビソルミディウムを材料にした解析も進めており、これらの結果の論文発表を進めていきたい。また、昨年度までの研究によって得られてきた「細胞膜プロトンポンプの活性化前後におけるホスホプロテオミクス解析」と「細胞膜プロトンポンプの複合体を構成するタンパク質の同定と機能解析」の成果についても、論文としての取りまとめを進めていきたい。
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Research Products
(41 results)
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[Journal Article] Brassinosteroid involvement in Arabidopsis thaliana stomatal opening.2017
Author(s)
Inoue S, Iwashita N, Takahashi Y, Gotoh E, Okuma E, Hayashi M, Tabata R, Takemiya A, Murata Y, Doi M, Kinoshita T, Shimazaki K.
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Journal Title
Plant & Cell Physiology
Volume: 58
Pages: 1048-1058
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Molecular actions of two synthetic brassinosteroids, iso-carbaBL and 6-deoxoBL, which cause altered physiological activities between Arabidopsis and rice.2017
Author(s)
Nakamura A, Tochio N, Fujioka S, Ito S, Kigawa T, Shimada Y, Matsuoka M, Yoshida S, Kinoshita T, Asami T, Seto H, Nakano T.
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 12
Pages: e0174015
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Loss of function at RAE2, a novel EPFL, is required for awnlessness in cultivated Asian rice.2016
Author(s)
Bessho-Uehara K, Wang DR, Furuta T, Minami A, Nagai K, Gamuyao R, Asano A, Angeles-Shim RB, Shimizu Y, Ayano M, Komeda N, Doi K, Miura K, Toda Y, Kinoshita T, Okuda S, Higashiyama T, Nomoto M, Tada Y, Shinohara H, Matsubayashi Y, Greenberg A, Wu J, Yasui H, Yoshimura A, Mori H, McCouch SR, Ashikari M.
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 113(32)
Pages: 8969-8974
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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