2016 Fiscal Year Annual Research Report
重力を指標とした植物の側生器官の成長方向制御の分子機構の解析
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15H04388
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森田 美代 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (10314535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重力応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
主茎、主根の重力屈性において感受細胞内のシグナリングに関与するDLLs(DGE1, DGE2, DTL)は、側枝及び側根の伸長方向をそれぞれ重力と逆(上)方向及び下方向に向ける働きを持つ。一方、DLLsに相同性を示すものの、重力屈性におけるDLLsの機能に必須なCDL配列を持たないという特徴を持つAtTAC1は、DLLsとは逆に側枝を下方向に向ける生理機能を持つ。DLLsと同じファミリータンパク質でCDL配列をもつが機能未知のCCP1, CCP2, CCP3も解析対象に含め、主軸の重力屈性と側生器官の伸長方向制御を統一的に理解することを目指している。 1. 変異体の確立 dlls 三重変異体背景にccp1及びccp2のCRISPR/Cas9による変異導入を行い、四重変異体を得た。現在これらを交配し五重変異体の作出を進めている。dlls ccp3四変異体を作出し、attac1と多重変異体を作成中である。 2. DLLs ファミリー遺伝子及びAtTAC1の側生器官における発現解析 CCP1, CCP2, CCP3, AtTAC1のPromoter::GUS形質転換体を用いて、大まかな発現パターンを観察した。使用したプロモーターにAtTAC1, CCP3のcDNAを連結し、変異体表現型を相補するかどうか確認したところ、期待に反して相補しなかった。この原因について現在検証中である。 3. DLLsファミリーとAtTAC1の機能解析 3.に記したように、AtTAC1, CCP3について機能的なPromoter::cDNAが得られていないことから、現在スプライシングバリアントやプロモーター領域、cDNAとの連結方法などを改変し、機能を持つコンストラクトを同定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データベースからAtTAC1及びCCP3はスプライシングバリアントの存在が示唆されたので、それぞれ側枝及び主根から調整したRNAをもとに、転写産物の解析を行った。両者とも機能的に重要なCDL配列に多様性が生じ、CDLに似た配列を持つAtTAC1やCDL配列のC端半分を欠失しているCCP3のバリアントが見つかった。また、AtTAC1ではN端側にも多様性があり、予想よりもプロモーター領域が3’側にずれる可能性も考えられた。現在、どのタイプのcDNAが表現型を相補できるのかを明らかにするため、変異体背景の形質転換体を作成中である。これらの結果は、AtTAC1やCCP3について、組織や器官ごとにスプライシングによる機能調節が行われている可能性を示唆しており、興味深い。 ccp3-1, ccp3-3のT-DNA挿入変異体2種について解析中であるが、前者は転写産物を生じないnull変異体、後者はCDL配列を欠く転写産物を生じる変異体である。いずれも単独変異体では顕著な表現型を示さないが、ccp3-3ではdllsとの四重変異体が得られるがccp3-1ではdge1との二重変異体が得られない。現在ccp3-1を含むdlls多重変異体の致死的な表現型がCCP3に本当に由来するのかを確認中である。dlls多重変異体が致死的表現型を示すなら、このファミリー遺伝子が重力屈性以外にも重要な生理機能を持つことを意味しており、さらに解析を進める必要がある。 以上のような当初予期しなかった事態に対処しているため、進捗はやや遅れているが、遺伝子の機能を正確に理解するためには不可避の対応である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 変異体の表現型解析; ccp1, 2変異体を確立し、dlls, ccp3, attac1 と交配により、様々な組み合わせの多重変異体の作成を行い、各系統の表現型の解析を行うことにより、GSA制御と各遺伝子との関係性を明らかにする。また、ccp3変異体のアリルによる表現型の違いに留意し、DLLsファミリー遺伝子の新規生理機能の解析を進める。 2. DLLs ファミリー遺伝子及びAtTAC1の側生器官における発現解析; CCP3, AtTAC1については、スプライシングバリアントやプロモーター領域、cDNAとの連結方法などを改変し、機能的コンストラクトを同定する。これをもとに、Promoter::GUSコンストラクトが適切であったかを検討し、必要に応じて再度適切な形質転換体の作出を行い、発現を再確認する。 3. DLLsファミリーとAtTAC1の機能解析; AtTAC1, CCP3について機能的なスプライシングバリアントもしくは連結方法を明らかにした後、感受細胞特異的promoter::cDNAを作成する。感受細胞のみでの当該遺伝子の発現が側生器官伸長方向の表現型を相補できるかどうかを指標に、各遺伝子の分子機能の類似性と機能組織を調査する。側枝のGSA制御において逆の活性を示すと思われるDLLsとAtTAC1であるが、両者の発現量のバランスとGSA制御との間に関連があるかを調べる。野生型背景や変異体背景において感受細胞特異的promoterあるいは他の組織特異的promoterによるGAL4-UAS制御系等を用い、各遺伝子の発現量の摂動を引き起す形質転換体を作出する。
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Research Products
(1 results)