2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトと類人猿のゲノムの大きな違い:組換え頻度に関する仮説のゲノム編集を用いた検証
Project/Area Number |
15H04427
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古賀 章彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (80192574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (10128308)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, その他の研究科, 准教授 (50261178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 霊長類 / 染色体 / ヘテロクロマチン / 組換え / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体端部の大規模ヘテロクロマチンの有無は、ヒトと類人猿のゲノムの大きな違いである。チンパンジーおよびゴリラにはあって、ヒトにはない。これが染色体端部での組換え頻度に影響を与えているとの仮説を立てた。この仮説を検証することが、本課題の目的である。 この目的ために組換え頻度を測定するが、そのために染色体を加工した細胞を作る必要がある。チンパンジー型ヒト細胞(ヘテロクロマチンを付加したヒト細胞)とヒト型チンパンジー細胞(ヘテロクロマチンを除去したチンパンジー細胞)である。平成27年度はこの作製の作業を行った。いずれも、まずこのヘテロクロマチンを認識する人工ヌクレアーゼを作り、それを培養細胞に作用させるという手順になる。10月に人工ヌクレアーゼが完成し、12月に想定どおり機能することの確認が完了した。それから培養細胞数系統への適用に移った。除去や付加の場所は偶然に影響され様々となるため、適切な場所でこれが起こった細胞を選択する過程が、必要となる。これには細胞分裂10世代分以上の期間を要すると見込んでいる。3月末の時点で、この選択が順調に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チンパンジー型ヒト細胞とヒト型チンパンジー細胞の完成は、当初は平成27年度末を目指していた。工程は変わらないものの速度をやや抑え、期間を平成28年度半ばまでに延ばすことにした。ただしこれは、見込み違いが理由ではなく、次に記すように、むしろ発展を見込んでの軌道修正である。 本研究課題の開始後に、ヒトとチンパンジーだけでなく、テナガザルの数種および新世界ザルの数種も、同様のヘテロクロマチンをもっていて本課題の目的のために使えることが、別の課題の成果から判明した。このため、本課題でテナガザルおよび新世界ザルも用いることにした。そして予備的な調査を、11月に開始した。3月末の時点で、ヘテロクロマチンの塩基配列の解読が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
上に記すように、目的を達成するために対象を広げて、研究をを推進する。とくに新世界ザルのほうで、染色体端部ヘテロクロマチンブロックが表現型に直接影響するとの示唆が、これまでの結果から得られている。むしろこちらを先に解明することで、ヒトとチンパンジーの違いの究明への大きな指標が得られることが、期待できる。数種類の対象を設定して、お互いに補完となる状況で、研究をすすめる。
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Research Products
(11 results)