2016 Fiscal Year Annual Research Report
Differences in genome structure between humans and apes: test for hypothesis concerning recombination frequency
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15H04427
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古賀 章彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (80192574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (10128308)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 類人猿 / 霊長類 / ヘテロクロマチン / 反復配列 / 染色体 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトと類人猿の間でゲノムの構造が大きく異なる点がある。染色体端部の巨大なヘテロクロマチンのプロックである。ヘテロクロマチンのDNA成分は、縦列反復配列の形状を呈する。チンパンジー、ボノボ、ゴリラの染色体の端部にはこのプロックがあり、ヒトにはない。このブロックの進化的意義を探ることが、本課題の目的である。 培養細胞に改変を加えて、チンパンジーの染色体からこのブロックを取り去る作業、またヒトの染色体にブロックを付加する作業は、予定通り進行している。これとの並行で、霊長類の他のグループでみられる同様の現象にも着目し、構造の解析と機能の類推を、本年度は実施した。小型類人猿のグループのフクロテナガザルとシロテテナガザル、また新世界ザルのグループのヨザルとマーモセットである。どちらも、前者に巨大なヘテロクロマチンのプロックがあり、後者にない。 それぞれのDNA成分の塩基配列の解析から、進化的起源の解明が進んだ。フクロテナガザルの縦列反復配列は、セントロメア領域を構成する反復配列の一部に由来するものであることは、以前明らかにしていた。セントロメア反復配列は全染色体にある。このうちの特定の数本の染色体にあるものが、直接の起源であると示唆する結果を、今回得た。ヨザルの反復配列は、他に類似する配列はみつからず、起源は不明であった。解析方法を工夫し、霊長類の共通祖先で生じた小規模の反復配列に由来することを示唆する結果を得た。 反復配列の機能については、ヨザルの方で明確な結果を得た。ヨザルは昼行性から夜行性に、最近移行した。この移行に伴い、視細胞の核の形状が、夜間視力の増強につながる方向に変化している。その変化の主たる要素であることを、ヘテロクロマチンの核内空間配置を調べて、明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトとチンパンジーの染色体の改変は、実験の条件を試行錯誤で決める必要があり、これには最初の1年または2年を予定していた。2年かかったが、予定の範囲内であるといえる。ヨザルの塩基配列の解析は、ヒトおよび類人猿の解析の補強となるため、本課題開始後に追加した。明確な結果が得られて、論文にまとめた。その原稿が現在審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題で立てた仮説は、ヒト上科の祖先ですでにヘテロクロマチンブロックがあり、ヒトとチンパンジーが分岐した後でヒトの系統でこれが消滅したことを、前提としている。この前提が正しいかどうかの検討も、本課題の1年目と2年目で、合わせて行っていた。具体的には、ヒト上科と同様の現象がみられる小型類人猿および新世界ザルのグループでの、ヘテロクロマチンブロックの進化的起源の追求である。その結果を、ヒト上科の場合と比較することになる。 これまでに得られた結果は、小型類人猿および新世界ザルの場合は、ヘテロクロマチンブロックをもたない方の種で消滅したのではなく、もつ方の種で急速に増幅したものであることを、示している。これから、染色体端部は一般的に、ヘテロクロマチンの短期間での増幅を可能にする機構を持ち合わせていることが、推察される。 この推察が正しいならば、ヒト上科の場合、ヒトで消滅した可能性に加えて、類人猿で急速に増幅した可能性も、検討する必要が生じる。この2つの可能性の詳しい系統を進める。
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Research Products
(8 results)