2015 Fiscal Year Annual Research Report
米ぬかのコナギ抑草効果に関与する土壌有機酸および土壌微生物相の解明
Project/Area Number |
15H04446
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
内野 彰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター生産体系研究領域, 上級研究員 (20355316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機農業 / コナギ / 米ぬか / 雑草防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
米ぬか散布後の土壌中に増殖する土壌微生物の代謝産物を介した抑草機構を検証するため、本年度は以下の研究を行った。 (1)コナギ抑草機構の異なる土壌を用いてワグネルポット試験で米ぬか散布のコナギ抑草効果を評価するとともに、土壌表層の土壌溶液の芳香族カルボン酸類(安息香酸、2-フェニルプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸および4-フェニル酪酸)の濃度を測定した。その結果、コナギ抑草効果の高い土壌の土壌溶液で3-フェニルプロピオン酸およびフェニル酢酸濃度が高い傾向があった。一方、ナタネ油粕で同様の試験を行った結果では、コナギ抑草効果が高かったものの芳香族カルボン酸が検出されなかった。 (2)各種有機酸水溶液中でコナギの発芽試験を行い、濃度反応曲線を作成したところ、芳香族カルボン酸類の中で最も発芽阻害効果が高かったのは3-フェニルプロピオン酸であった。この結果は30℃明条件と25/20℃12時間日長条件とで同様であったが、50μM以下の濃度ではほとんど発芽阻害効果が認められなかった。実際の土壌溶液中では、最も高い濃度を示した3-フェニルプロピオン酸でも10μM未満の濃度であったため、芳香族カルボン酸の阻害効果だけでは実際のコナギ抑草効果を説明できなかった。 (3)PCR-DGGE法を用いて、米ぬか抑草効果の高い土壌と低い土壌を比較し、異なる増幅効率を示した細菌rRNA遺伝子を単離して塩基配列を同定したところ6種類の細菌が同定された。1種類の細菌について特異的プライマーを設計してPCRでrRNA遺伝子を増幅させたところ、米ぬか抑草効果の高い土壌で多く増幅されることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、芳香族カルボン酸類を抑草物質の候補として同定を進める予定であったが、本年度の試験結果から、別の要因を想定する必要が生じたため、次年度以降試験系を見直して抑草物質の候補をあらためて同定することとした。またPCR-DGGE法による土壌微生物の同定においては、極めて多数の種類のrRNAが土壌から増幅される一方で、顕著な違いが認められたrRNAが予想より少なく、候補としては6種類しか同定できなかった。こちらも次年度以降は試験系を見直し、より単純な系でコナギ抑草効果を再現し、その中で特異的な微生物を同定することにより、効率的な微生物の同定を目指すこととした。このように当初の計画どおり研究が進まず、計画の変更となったことから進捗状況を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果では芳香族カルボン酸の中に有望な化合物が見つからなかったことから、平成28年度は米ぬか散布前の土壌抽出液を用いて米ぬかを分解し、その濾液でコナギ発芽阻害効果を評価する単純な室内実験系を作成し、この実験系をもとにコナギ発芽阻害物質の同定と発芽阻害物質を生産する微生物の同定を試みる。 (1)室内実験系の作成:米ぬか散布後のコナギ抑草効果が異なる数種類の土壌について、50mLチューブ内で湛水し、一定時間後に土壌溶液を抽出する。土壌溶液と米ぬかを混合して20-30℃の条件で数日間培養した後、培養液を濾過してコナギ発芽試験を行う。湛水におく期間や温度などの条件や米ぬかと混合した後の期間や温度などの条件の検討を行い、圃場における土壌のコナギ抑草効果が再現できるような条件を設定する。また滅菌・未滅菌の条件でコナギ抑草効果を評価し、各ステップにおける微生物活性の寄与についても明らかにする。 (2)コナギ発芽阻害物質および微生物の同定:発芽阻害活性のある溶液を分画・精製して発芽阻害物質同定のための実験系を組み立て、HPLCやGC-MSなどを用いて発芽阻害物質の同定を試みる。また発芽阻害活性のある土壌溶液や米ぬかと混合した後の溶液から、細菌および糸状菌のDNAを単離し、PCR-DGGE法でrRNAのバンドパターンを比較し、コナギ発芽阻害活性と相関するrRNAのバンドを明らかにする。相関の高いrRNAの塩基配列を決定した後は、その配列をデータベースで検索することにより、コナギ発芽阻害活性と関連性の高い微生物群を同定する。
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