2015 Fiscal Year Annual Research Report
花弁緑色化と花持ち性向上を目的とした花きの分子育種技術の開発とその分子機構の解明
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15H04449
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
白武 勝裕 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90303586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花弁緑色化 / 花持ち性向上 / 花形改変 / 分子育種 / オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
① FGPを活用した緑色かつ花持ちの良い花きの分子育種技術の確立:当初計画では,花弁特異的プロモーターとして,InMYB1上流1 kbpを用いる予定であったが,InMYB1上流332-121 bpの領域を3連結し,TATA配列(転写活性化に関与する配列)とΩ配列(転写のエンハンサーに関与する配列)を結合したキメラプロモーターを構築したところ,より花弁特異性が高く,遺伝子の発現能力も高いことが分かった.そこで,この[InMYB1 332-121×3-TATA-Ω]をFGP発現ベクターに用いることとした.このプロモーターの構築を先行して行ったため,ベクターの作成が全体として遅れているが,現在,当初計画に上げた[alcohol dehydrogenases非翻訳領域(ADH UTR)]と[heat shock protein terminator(HSP ter)]をFGPの前後に付加するベクター(InMYB1 332-121×3-TATA-Ω::ADH UTR-FGP-HSP ter)の構築を進めており,数ヶ月以内にベクターが完成する予定である.
② FGPによる花弁緑色化,花形の変化,花の寿命延長のメカニズムの解明:FGP過剰発現シロイヌナズナとFGP過剰発現アサガオの花弁の表現型の観察を行った.実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)による花弁表皮細胞の詳細な形態観察により,FGP過剰発現体の緑色花弁が気孔を持ち,表皮細胞が平坦でジグソーパズル形の形状をしていることが明らかとなった.また,透過型光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡(TEM)の観察により,FGP過剰発現体の緑色花弁の柔細胞には,チラコイド膜が発達し,デンプン粒が存在する,葉緑体が多数観察された.以上のことから,FGP過剰発現体の緑色花弁は,基本的な花弁の要素を保ちながらも,アイデンティティが葉に近づいていることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
① FGPを活用した緑色かつ花持ちの良い花きの分子育種技術の確立:上述のように,花弁特異性が高く,遺伝子の発現能力も高い[InMYB1上流332-121 bp×3-TATA-Ω]の開発に成功したが,その開発に注力したため,全体としてベクターの構築が遅れている.しかしながら,現在,この花弁特異性が高く,遺伝子の発現能力が高いプロモーターを用いた,[InMYB1 332-121×3-TATA-Ω::ADH UTR-FGP-HSP ter]ベクターの構築を進めており,数ヶ月以内にベクターが完成する予定である.このベクターが,構築できるまでは,従来から用いてきたCaMV 35Sプロモーター下でFGPを発現させるベクターを用いて,様々な花きへの形質転換実験を先行して進めるため,全体として研究が大きく遅延することはない.したがって,やや研究の遅れはあるものの,良い方向への研究の変更にともなうものであり,遅れの挽回も容易なレベルである.
② FGPによる花弁緑色化,花形の変化,花の寿命延長のメカニズムの解明:当初計画通りに順調に研究が進展し,『FGP過剰発現体の緑色花弁は,基本的な花弁の要素を保ちながらも,アイデンティティが葉に近づいている』といった重要な発見があり,次年度以降の研究の基礎となる知見が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
① FGPを活用した緑色かつ花持ちの良い花きの分子育種技術の確立:平成27年度に作成が完了予定であった「花弁特異的FGP発現ベクター(InMYB1 332-121×3-TATA-Ω::ADH UTR-FGP-HSP ter)」の作成が遅れているため,その完成を急ぐ.しかしながら,その完成を待っていては実験に遅れが出てしまうため,従来から用いてきたCaMV 35Sプロモーター下でFGPを発現させるベクターを用いて,様々な花きへの形質転換実験を先行して進める.「花弁特異的FGP発現ベクター」が完成次第,このベクターを用いた形質転換に切り替える.具体的には,白花のトレニア,ユウガオ,セキチク,ミヤコグサなどに形質転換を行う.これらを選定した理由は,形質転換が比較的容易で,形質転換から開花までの期間が長くないもの,且つ分類学的に双子葉植物の広い科や目をカバーするためである.また,白と赤などのバイカラーの花きへの形質転換を行い,トリカラーの花の作出も試みる.
② FGPによる花弁緑色化,花形の変化,花の寿命延長のメカニズムの解明:FGP過剰発現体におけるトランスクリプトミクス,メタボロミクス,ホルモノミクスを実施する.トランスクリプトミクスは,シロイヌナズナについてはマイクロアレイ解析,アサガオについてはRNAseqを実施する.理化学研究所の協力を得て,メタボロミクスは主に二次代謝産物をターゲットとしたLC-TOF-MS解析,ホルモノミクスはLC-TripleQ-MSを行う.これらデータのマイニングから,花弁緑色化,花形の変化,花の寿命延長に関わる遺伝子や代謝物,植物ホルモンを絞り込む.
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Research Products
(7 results)