2015 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌エフェクターNIS1の植物免疫抑制機能に関する研究
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15H04457
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 義孝 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80293918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物病原糸状菌 / 炭疽病菌 / エフェクター / 植物免疫 / PAMPs |
Outline of Annual Research Achievements |
植物病原糸状菌はエフェクターと呼ばれる分泌タンパク質を駆使することにより、宿主植物の免疫機構に干渉し感染を成立させていると推定される。申請者は様々な植物病原糸状菌に保存されているエフェクターNIS1を炭疽病菌より同定し、これまでにNIS1の発現により特定の植物免疫抑制反応が抑制されること、さらにNIS1がPAMP誘導型免疫システムの構成因子であるBAK1と結合することを発見している。また、イネいもち病菌のNIS1ホモログ(MoNIS1)の標的破壊株では病原性が劇的に低下することを見出している。これらの結果より、NIS1は植物病原糸状菌に保存された重要エフェクターであることが推察される。本研究ではNIS1によるBAK1の干渉機能について、その結合領域解析およびBAK1機能への阻害効果解析により明らかにし、さらにNIS1のBAK1以外の標的を同定し、その免疫抑制能の全貌に迫ることを主たる目的としている。本年度は、第一にイネいもち病菌のMoNIS1について、イネのBAK1オルソログであるOsBAK1との相互作用の有無について検討した。ベンサミアナタバコによる一過的発現系を用いた免疫沈降解析の結果、MoNIS1がOsBAK1と相互作用することが判明し、MoNIS1がOsBAK1を標的とすることが強く示唆された。また、ウリ類炭疽病菌のNIS1がシロイヌナズナのBAK1に加え、PAMP誘導型免疫システムの別の構成因子であるBIK1(Botrytis-Induced Kinase 1)とも結合することを発見した。さらに、BIK1は病原菌認識時の活性酸素生成に必要であるが、NIS1の発現によってベンサミアナタバコにおける活性酸素生成は抑制された。本結果は、植物病原糸状菌において広く保存されているエフェクターNIS1が、PAMP誘導型免疫システムの複数の因子を標的とすることを強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿い研究を進め、研究実績の概要において述べたとおり、着実に成果が得られている。イネいもち病菌のMoNIS1が、OsBAK1と相互作用する結果は、MoNIS1がOsBAK1を標的とすることが強く示唆するものである。特筆すべきなのは、NIS1の標的として、BAK1に加えて、BIK1の同定に成功した点である。ベンサミアナタバコによる一過的発現系を用いた免疫沈降解析の結果、NIS1とBAK1の相互作用が明らかとなり、さらにそのことを裏付ける形で、NIS1の発現によってBIK1の重要機能である活性酸素生成が抑制されることを明らかにしている。これらより、本年度は、当初の計画以上に当該研究を推進できたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はとてもスムーズに進展しており、引き続きこのペースが落ちないように、随時、状況に対する検証をかけながら、本研究を推進していきたい。まず、本年度の解析でウリ類炭疽病菌のNIS1がシロイヌナズナのBIK1と結合する結果を得たが、イネいもち病菌のNIS1オルソログMoNIS1がBIK1と結合するかは不明であり、この点を検証するための免疫沈降解析を今後おこないたい。また、ウリ類炭疽病菌のNIS1はBAK1の細胞質領域に結合することを見出しており、このことはBAK1のキナーゼ活性(キナーゼドメインは細胞質領域に存在する)がNIS1により阻害される可能性を提示しており、この点を調査するためにin vitroでのリン酸化アッセイを計画している。また、ウリ類炭疽病菌はベンサミアナタバコに感染することができる。そこでベンサミアナタバコにおいてエフェクターNIS1を発現させることによって、ウリ類炭疽病菌への罹病性が増大するかを調査し、本菌の感染戦略とNIS1との関連を調査する。上記の計画研究を軸に、同時に得られた成果を踏まえつつ、エフェクターNIS1の機能解明に向けての研究を効果的に推進していきたい。
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Research Products
(11 results)