2016 Fiscal Year Annual Research Report
導入種コレマンアブラバチにおいて夏季に世代継続を阻害する要因の解明
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15H04463
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
長坂 幸吉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域, グループ長 (50355137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光永 貴之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域, 任期付研究員 (50569506)
上杉 龍士 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域, 任期付研究員 (10423005)
日本 典秀 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域, 上級研究員 (80370675)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コレマンアブラバチ / アブラムシ / 競争 / 高次寄生蜂 |
Outline of Annual Research Achievements |
「1.アブラバチ(一次寄生蜂)、二次寄生蜂のDNAマーカーの開発」に関しては、昨年度解析したコレマンアブラバチを含む4種の一次寄生蜂と7種の二次寄生蜂に、新たに一次寄生蜂2種(Binodoxys communis, Lysiphlebia japonica)を加え、関東地域以外の個体を含めて、DNAマーカーによる識別が可能であることを確認した。 「2.野外における二次寄生蜂群集の把握」に関しては、コレマンアブラバチおよび代表的な土着アブラバチに寄生させたアブラムシを野外で暴露した後、羽化してくる寄生蜂を調査したところ、コレマンアブラバチでは春から秋の主要な二次寄生蜂はPachyneuron aphidis, Syrphophatus tachikawai, Alloxysta sp. nr victrix, Dendrocerus laticepsであった。一方、土着種ナケルクロアブラバチではP. aphidisとD. laticepsなどが主となり、S. tachikawai, A. sp. nr victrixの2種はほとんど見られなかった。コレマンアブラバチは主要な土着アブラバチに比べて、二次寄生蜂の種数が多い可能性がある。 「3.数式モデルによる侵入種定着条件の評価」に関しては、アブラムシ体内でのアブラバチ幼虫の1齢期間に相違がある場合にはコレマンアブラバチが土着のアブラバチとの直接的競争では負けるが、相違がない場合には、直接的競争の勝敗は半々であることが昨年の実験結果から示唆された。そこで、同一ビニールハウス(0.5a)内で、コレマンアブラバチと土着のナケルクロアブラバチ(1齢期間がコレマンアブラバチと変わらない)を同時にバンカー法により飼育したところ、3ヵ月間両種が共存する事例を得た。これにより、野外観察でも昨年の実験結果の一部は再現できることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアCOI領域の解析により主要なアブラバチ(一次寄生蜂)と主要な二次寄生蜂の識別が可能であることを複数の地域個体群について確認できた。今後の群集レベルの解析に移行することができる。 また、一次寄生蜂の種による二次寄生蜂相の違いを示唆するデータが得られていることから、二次寄生蜂の寄生圧が、コレマンアブラバチの夏の消失を起こしていることについての代替仮説の一つであることを示した。 一次寄生蜂の種間競争についても、コレマンアブラバチと土着アブラバチの混在状況下での調査を実施し、その可能性を検討できた。 以上から、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
同一寄主個体内でのアブラバチ間の直接的競争では多くの場合土着アブラバチ類の方が有利であることが27年度に示唆された一方で、うまく共存できる可能性のある土着アブラバチ類があることも28年度の結果から示唆された。また、一次寄生蜂間の競争の別の側面として個体群間の増殖における競争もあるので、これを検討するために、寄生蜂の発育速度や産卵数といった生活史パラメータを得つつある。一方、土着のアブラバチは二次寄生蜂を避ける方策を持ち、導入天敵コレマンアブラバチは日本の二次寄生蜂を避けることができないという仮説については、コレマンアブラバチでは二次寄生蜂の種数が代表的な土着アブラバチよりも多い可能性が示唆された。これまでに各種条件(季節、寄主植物、寄主アブラムシ)における一次寄生蜂と二次寄生蜂のサンプルを蓄積しているので、最終年においては、DNAマーカーによる同定を加えて、アブラムシの寄生蜂群集の解析を行う。そして、これらを基にした数式モデルによる個体群動態の予測と検証を行い、定着を阻害する要因を解析する。
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Research Products
(1 results)