2016 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2環境によるイネの生育抑制の分子基盤の解明と抑制解除技術の開発
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15H04470
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳富 光恵 (宮尾光恵) 東北大学, 農学研究科, 教授 (70181980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高CO2環境 / 葉の発達段階 / C/Nバランス / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、高CO2環境を伝達するシグナルの同定とシグナル伝達経路の解明に向け、解析を進めた。 1.シグナル物質の送り手である最上位最大展開葉のトランスクリプトーム解析 短時間(7時間、14時間)高CO2処理を施したイネの最上位最大展開葉(P6葉)のマイクロアレイ解析を行った。高CO2処理で様々な代謝関連遺伝子が発現変動を示すことが確認された。また、予想していたトレハロース 6-リン酸合成関連遺伝子に加え、ホルモン合成関連遺伝子やホルモン応答性遺伝子の発現が大きく変動することがわかった。さらに、葉の発達に関与することが知られている数種類のmiRNAの発現が高CO2処理で促進されることが明らかにされた。 2.シグナルの受け手である発達中の葉(P4葉)の解析 トランスクリプトーム解析に向け、P4葉の採取条件・RNA抽出条件を検討した。イネ植物体(葉齢7)より地上部基部を採取し、75%エタノール/25%酢酸で固定した。固定した組織を4℃に保ちながら周りの組織を剥がし、P4葉を単離した。本法では、固定したサンプルを減圧条件下で固定液に浸潤させておくことにより、1時間で10枚程度のP4葉の採取が可能となった。また、P4葉を包んでいる組織の削除は時間の要する作業であるが、固定したサンプルを4℃で保存し、4℃で削除作業を行うことで、組織内RNAの損傷を最小限に抑えるようにした。このように単離したP4葉1枚から、定法により、純度の高いRNAを得ることができた。また、P4葉より、miRNA解析用の低分子量RNAを含む全RNA画分を精製することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(27年度)に高CO2処理に使用するグロースチャンバーが故障し、修理・調整に4ヶ月近く要した。変更後の計画通りに研究は進んでいるが、全般的に、当初計画より研究が若干遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
下位葉に包まれ、かつ、サイズの小さいP4葉の採取は懸案事項であったが、化学固定を採用し、採取方法を工夫することで、単離したP4葉より純度の高いRNAも得ることができた。今後は、シグナルの送り手であるP6葉と、シグナルの受け手であるP4葉のトランスクリプトーム解析を並行して行うことにより、高CO2環境を伝達するシグナル物質とシグナル伝達経路を検討する。
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Research Products
(4 results)