2016 Fiscal Year Annual Research Report
細菌における高度不飽和脂肪酸含有生体膜ドメインの形成機構と生理機能
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15H04474
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
小川 拓哉 京都大学, 化学研究所, 助教 (40756318)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体膜 / リン脂質 / 高度不飽和脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / マイクロドメイン / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
エイコサペンタエン酸 (EPA) の欠損で細胞分裂不全が生じる細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 を用いて、細胞分裂における EPA の機能発現機構を解析した。まず、細胞分裂時に核様体閉鎖領域でリング状に会合する FtsZ に対する抗体を調製した。これを用いて、S. livingstonensis Ac10 の野生株と EPA 欠損株の FtsZ を免疫蛍光染色の手法で可視化した。その結果、FtsZ が形成するリング構造(Z リング)は野生株では観察されたが、EPA 欠損株では観察されなかった。このことから、EPA は FtsZ の正常な会合に要求されると考えられた。次に、EPA と FtsZ の関係をより詳細に調べるため、EPA のω末端メチル基をエチニル基(-C≡CH)に置換した EPA アナログ (eEPA) を用いて、eEPA と FtsZ の共局在性を解析した。S. livingstonensis Ac10 の EPA 欠損株に eEPA を取り込ませると eEPA が EPA の機能を代替し、細胞分裂阻害が抑制されるが、この細胞について、eEPA を蛍光標識アジド化合物 (Alexa Fluor 488 azide) とクリックケミストリーの手法で結合させることで可視化した。その結果、eEPA 含有リン脂質が濃縮されたと考えられるドット状の蛍光シグナルが細胞内に観察された。さらに、FtsZ を免疫蛍光染色によって可視化することで eEPA との共局在性を解析したが、eEPA と FtsZ との共局在は観察されなかった。これらの結果から、EPA は Z リングの形成に関与するが、EPA と FtsZ との間に恒常的な相互作用はなく、Z リング形成時に一過的に相互作用することや、EPA が間接的に FtsZ の会合に影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EPA が FtsZ による Z リング形成に関与することを明らかにし、また、eEPA と FtsZ の共染色に成功するなど大きな進展があった。一方、Z リング形成における EPA の具体的役割については未解明であり、また、細胞分裂に伴って形成される高曲率の膜構造への EPA 含有リン脂質の局在性も明らかにできていないため、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EPA のリン脂質への導入を担う PlsC1 と、FtsZ などの細胞分裂関連タンパク質の相互作用や、PlsC1 の局在性と EPA 含有リン脂質の局在性の相関について解析を進める。EPA 含有リン脂質との相互作用や EPA による修飾が膜タンパク質の構造と機能におよぼす影響についても解析を進める。
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