2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H04484
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森 春英 北海道大学, 農学研究院, 教授 (80241363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐分利 亘 北海道大学, 農学研究院, 助教 (00598089)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖質合成 / 酵素利用 / 糖ヌクレオチド / 糖転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖質は,構成糖と結合様式の組合せにより,極めて多様であり,多数の潜在的機能性物質の存在が予想される.この探索には先だち,多様な糖質の大量合成系確立が必須である.本研究では,一層高度な糖質合成系確立に向けて,(a)合成酵素と(b)転移酵素に注目し,これら酵素の高機能化・高度利用化を通し,基盤的で実用的な糖質大量生産技術確立を目的としている. (a)合成酵素利用での主要問題は,合成基質(UDP-Glcなどの糖ヌクレオチド)の供給である.効率的合成法確立して大幅なコストダウンが必要である.本研究では,ショ糖合成酵素の機能強化・効率的利用により,安価なショ糖を材料として合成基質を供給する.加えて,合成酵素も共存させたワンポット反応により,UDPの再利用により,UDP量非依存的な生成物蓄積を図る. 植物由来のショ糖合成酵素(組換え酵素)と二糖合成酵素をワンポットで反応させ,高効率での高濃度二糖蓄積に成功した.またショ糖合成酵素の構造機能解析によりUDP特異性に関わるアミノ酸残基を同定し,この改変により,顕著な速度低下を伴わずに他の糖ヌクレオチド合成に適した改変ショ糖合成酵素を作出した. (b)転移酵素利用での問題は,限定的な酵素種類である.既存酵素の改良ならびに構造類似タンパク質の機能探索を通して,酵素の多様化を図る.既存の酵素Dは,天然に豊富なオリゴ糖に作用し,糖転移反応により結合様式の異なるオリゴ糖・多糖を生成する酵素である.本酵素による糖転移生成物について,使用する基質の重合度ならびに基質濃度に依存して生成物の結合様式が変化する現象を見出して速度論的に評価を行った.また,生成物の結合特異性に関与するアミノ酸残基を同定を通して改変酵素も作出した.本酵素Dにアミノ酸配列類似性を示す一群のタンパク質から数種を選択して機能解析を実施した.酵素D様の反応が確認されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(a)合成酵素利用:ショ糖合成酵素と二糖合成酵素のワンポット反応により,高効率で目的二糖の合成に成功した.すなわち,UDP-Glcなどの糖ヌクレオチドを用意すること無く,安価なショ糖を出発材料として,かつUDPも触媒量程度に低濃度で良く,従来の高価な糖ヌクレオチドを必要とするのとの問題は本法により解消されたと言える.加えて,本ショ糖合成酵素のUDP特異性に関わるアミノ酸残基の同定に基づいて改変した酵素により,触媒能力の顕著な低下無しに各種NDPを基質とでき,すなわちADP-Glc等の供給も可能とし,様々な糖合成酵素への応用の基盤が整備された.一例として合成した二糖は,近年,植物における発生や花序形成,代謝制御に関わるとして注目度が上がっている化合物である.現状二糖は試薬として販売されるもののコストならびに供給安定性ともに改善が求められる状況にある化合物であり,実際の物質供給としての貢献も高いと評価できる. (b)転移酵素利用:天然に豊富な多糖・オリゴ糖に作用して,糖転移反応により結合の異なるオリゴ糖・多糖を生成する酵素Dについて,基質とその濃度に依存した糖転移結合様式の変化ならびに結合様式決定の一因となるアミノ酸残基を明らかにした.これにより,酵素Dとその改変酵素を使用してたより多様な糖質合成が可能となった.また,関連酵素の探索を通して,酵素D様の活性ながら,異なる至適反応条件を有する酵素が見出された.
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Strategy for Future Research Activity |
(a)合成酵素利用:H28年度までに,「ショ糖合成酵素とカップリング反応による効率的糖ヌクレオチド供給」による糖質合成を実証できた.特に,近年植物の代謝制御に関わる物質として注目されながらも供給不十分な二糖の効率的合成に寄与できた.これを,広範に応用して多様な糖質・グリコシド合成に利用できる事をしめす.特に,糖供与体をUDP-Glcに限定せずに利用可能であることを実証する.生成物の収量は,ショ糖とのエネルギー差により一義的に決まる平衡に依存するが,効率的な(低酵素量,短時間での)生成に関与する反応条件を見極めて,本用途に一層適した酵素に向けての改良(酵素の高機能化)を行う. (b)転移酵素利用:酵素Dをベースとして更に構造機能相関解析を進める.特に,生成物の結合特異性と鎖長に注目しする.あわせて構造類似の予想タンパク質については,更に幅を広げてスクリーニングを行う.酵素Dでの知見を活用して,触媒・基質結合に関与のアミノ酸残基ならびに生成物特異性に関わるアミノ酸残基について注目しながら,近縁ながら多様性を示すタンパク質について,機能解析を進める.これらの構造機能相関の情報を統合して,分子育種を行い,酵素Dをベースとしつつ,生成物の結合特異性や鎖長特異性を改変した酵素の創出を目指す.
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Research Products
(6 results)