2017 Fiscal Year Annual Research Report
Developement of useful enzymes from thermophilic viruses
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15H04490
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 敏久 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10093345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 勇門 大阪工業大学, 工学部, 講師 (90570838)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好熱菌 / 極限環境微生物 / 酵素 / ウイルス / 溶菌酵素 / アルカリ性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
好熱菌などの特殊環境微生物を宿主とするウイルス(ファージ)の基礎や応用面での研究例は極めて少ない。特に応用面において潜在性の高い好熱菌ファージ由来の酵素の機能開発を進めるために、本研究では好熱・好アルカリ性ファージの分離とその機能解析を主な目的とした。 前年度までに、高温、アルカリ条件下で発酵生産される天然の「スクモ藍」から60℃, pH 9の培養条件下で、単独コロニーを形成する好熱好アルカリ性菌Geobacillus toebii OIT60-9-2株の分離に成功した。また本菌株を宿主とするファージφIN1を兵庫県・猪名川の土壌試料から得ることにも成功した。本年度は、このファージの生存に対する温度とpHなどの影響を解析した。その結果、本ファージは55℃までは約70%、60℃では40%の感染性を示し、好熱性ファージであることが判明した。またpH 5~9の広い範囲で残存感染率を示した。これらの結果からファージφIN1は好熱・好アルカリ性を示すが、宿主と共存する場合(培養温度60℃)と比較すると、耐熱性が少し低いことが分かった。次に、本ファージの透過型電子顕微鏡観察に成功し、本ファージが正十二面体構造をとる報告例は非常に少ない特徴的な形態をとることを明らかにした。以上の成果は日本農芸化学会2018年度大会(名古屋名城大学)で口頭発表を行った。さらに宿主のゲノム解析を進め、現在収集したDNAデータを解析中である。 一方、前年度までに見いだした好熱菌G. kaostophilusを特異的に溶菌する酵素(バクテリオシン)について、その精製を各種クロマトグラフィ―を用いて行い、部分精製酵素を得た。電気泳動的に分取した溶菌酵素タンパク質のN-末端アミノ酸配列の分析を行い、データベースでの相同性検索による遺伝子の同定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自然環境から分離した好熱好アルカリ性菌を宿主とする新規な好熱性ファージの分離に初めて成功し、そのファージの生育のための温度特性,pH特性を解析できた。また、電子顕微鏡写真による形状の分析にも成功したことから、本年度の研究により新規ウイルスの特徴が明確になったことから前年度に比較して大きな進展があったと言える。しかし、当初、本研究で分離した宿主菌のG.toebiiOIT60-9-2株と新規ファージΦIN1のゲノム解析を完了する予定であったが、宿主菌のDNAの調製に手間取り、年度末においてデータ収集が完了したところで遺伝子解析がまだ完了していない。 一方、高温温泉水中からのファージ探索の過程で、分離した好熱菌が好熱菌G. kaostphilusを特異的に溶菌する現象を見出した。この溶菌現象を解析した結果、溶菌活性を示すのが増殖をするウイルスではなく、ある好熱菌が生産する溶菌酵素(バクテリオシン)であることを明らかにした。その分子レベルでの特徴を解明するために、好熱菌培養外液からの溶菌酵素の各種クロマトグラフィーによる高度精製を試みたが、既知の乳酸菌などの溶菌酵素と異なる新規酵素である可能性が高いために、精製が困難で予想以上に時間を費やすことなり、当初の研究計画よりやや遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本科研費による研究実施の最終年度(4年目)であり、成果をまとめ、学術雑誌への論文発表や特許申請を行うことを計画している。まず、昨年度までに見出した宿主好熱菌とそのファージのゲノム解析を完了する。そのゲノム情報を基に、ウイルスの分類・同定を行う。また遺伝子の相同性検索から、ファージの酵素やタンパク質の遺伝子の同定を進める。その遺伝子の中から溶菌酵素やリガーゼなどの有用酵素遺伝子を大腸菌などを宿主としてクローニングし、遺伝子産物の生産性を高め、各種クロマトグラ―フィーを利用して高度に精製する。精製したタンパク質の機能などの特徴を生化学的分析により解明するとともに,結晶化を進め、X線構造解析を行う。 一方、好熱菌の溶菌酵素についても、遺伝子、分子レベルでの解析を進める。また溶菌活性を示す好熱菌の同定、溶菌酵素の遺伝子の塩基配列の解析、大腸菌による遺伝子のクローニングを行う。次に大腸菌での溶菌酵素の生産、精製を行い、その応用面への展開もはかるための生化学的特徴や構造の解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)