2016 Fiscal Year Annual Research Report
放射性炭素で解き明かす下層土壌における炭素ダイナミクスの実態と環境変化応答
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15H04523
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小嵐 淳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (30421697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 麻里子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (20354855)
石塚 成宏 国立研究開発法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 室長 (30353577)
平舘 俊太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (60354099)
國分 陽子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究副主幹 (10354870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌炭素動態 / 土壌有機物 / 炭素収支 / 気候変動 / 放射性炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
下層土壌(A層以深)には莫大な量の炭素が貯留していることが判明してきているが、それらが地球規模の炭素循環に果たしている役割は未解明である。本研究では、核実験によって生成した放射性炭素(14C)の土壌中での動きを半世紀にわたって追跡するという画期的な手段を用いて、下層土壌において数十年スケールで代謝回転する炭素の存在を検証し、その炭素量を定量把握することを目指している。 昨年度に高知県及び香川県内の森林において採取した土壌について、深さごとに炭素含有量等の測定し、14C同位体比分析のための前処理を終えた。これらの土壌に対して、土壌特性分析及び有機物構造解析を実施中である。 採取した土壌試料(表層と下層)を異なる温度条件(20℃、30℃)下で培養し、CO2放出率を継続的に測定することで、土壌有機物の分解挙動を調査した。表層土壌からは速やかにCO2が放出され、高温条件下でその放出率は高かった。培養初期(全土壌炭素のうち約0.2~1%程度に相当する炭素が放出)において放出されたCO2を回収し、その14C同位体比を分析した。その結果、Δ14C値は38~81‰の範囲であり、核実験以降に固定された有機炭素が主として分解放出されていることが示された。土壌によっては、高温条件下で放出されたCO2のΔ14C値が、低温条件下で放出されたCO2のそれよりも高い傾向が認められ、温度上昇によってより古い有機物の分解が促進されたことが示唆された。下層土壌については、CO2放出率が低く、14C同位体比分析に必要な炭素量を集めるために200日以上の培養期間を要することが分かり、培養実験を継続中である。 北海道内の2地点を新たに調査地として選定し、それらの地点に再訪して土壌の断面調査を行い、土壌試料を層位ごとに採取した。これらの土壌についても、各種分析のための土壌試料調整を行い、培養実験も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者間の密な連携により、調査地の選定ならびに土壌調査は当初の予定通り実施できた。各種分析もおおむね順調に進んでおり、データが蓄積されつつある。加速器質量分析装置による14C同位体比の分析が若干遅れているが、分析に必要な前処理は着実に進展しており、来年度の加速器質量分析装置のマシンタイムも十分に確保できており、問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降も、採取した土壌の各種分析を継続してデータを蓄積する。また、土壌型や植生などがこれまでの採取地と異なる地点を追加で選定し、土壌調査地点の拡充を図る。各種データの取得が進んできているため、それらを総合的に解釈するために、次年度にミニ検討会を開催する予定である。
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Research Products
(3 results)